花屋が見えて来た。それはもう大きな店で、店の前にまで花が溢れ、並び置かれてあった。数百本、いや、数千本もあろうかと思われるほどの、無数の花に囲まれて、その中に一人の女性が甲斐甲斐しく働いているのが見えた。

その姿は花屋の店員に相応しく、極めて優雅で華やかで、美を極めているものであった。しかもまだ十八、九の少女。若々しい声を張り上げて、通りすがる客たちに呼びかけているのである。

「皆さま、どうかお寄りになってくださいませ。見るだけでも結構でございます。そして、もしお気に召すものが、たとえ一本でもございましたら、お買い求めくださいませ。

私どもの、この店は、ナーダ国一番の花の総本舗、ナーダ・フローラの第一支店でございます。皆さまも知っての通り、ナーダ国は花で満ち溢れた国、花の国でございますから、それはもう無慮無数の花の種類があります。世界にも輸出しております。

そのすべてをこの店に集めて販売する訳には参りませんが、本店のナーダ・フローラに参りますれば、そのすべてを見かつ購入することが可能でございます。ここはあくまで主なものの見本市とお考えなさって、ご覧になってください。

さあ、皆様、どうぞ、見てください。いくらでもございます。

菊の花、バラの花、椿の花、梅の花、桜の花、桃の花、ツツジの花、クチナシの花、ダリア、水仙、ヒアシンサス、白蘭、黄蘭、胡蝶蘭、シンビジュウム、シンピジュウム、シンポジュウム、ツキミソウ、クラヤミソウ、ヒヨリミソウ、ジンチョウゲ、シンチョウゲ、チンチョウゲ、アヤメ、アイリス、ショウブの花、仙人花、天人花、善人花、竜舌蘭、象舌蘭、毒舌蘭、スミレ、タンポポ、ナズナの花、杉の花、栗の花、欅の花。モミジに咲く花もございます。松や楠や縄文杉やウドやアスパラやコケやカビに咲く花もございます。

水中花や泥中花や天上花、極楽鳥花や弥勒鳥花や阿弥陀鳥花もございます。

そうです、皆様はよき時に参りました。このナーダの国にしかないと言われ、またそう信じられておりましたのに、いまだ発見もされずにおりました夢の花、奇跡の花が、都から遠く離れた山中の古寺に発見されたのでございます。…」

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