三章「ロマンシング・デイ」当日、彼らは帰ってくる

トラヴィスは

「でも近年の保護者は意欲的にやろうとしない。多くの会員は渋々引き受けて、最低限の仕事しかやらないから、学校の教育方針の話は議題に出ることすらない。生徒たちが本当に学ばなければならないのは人間関係だ。俺の過去を知ればその定説に納得出来るんだけどな。保護者は任意の役員会への参加も消極的な割には自分の子供については口うるさくいう人ばかりだ」

とステファニーではない誰かに愚痴をこぼしている。トラヴィスは過去の出来事に何かを変えられたようだ。

「教育方針以外の議題はどんなのが出るのですか」

ステファニーは未だに興味を示している。善意のスイッチが入ったのだろうか。

「ええと、修学旅行の話とか……。ほら、この国は他国にいく手配だけで苦労するだろ。この国だけ他の国と比べて移動時間が長引くインフラ状態だし」

「それは確かに教育に全く関係ないな」

といいつつ、俺はトラヴィスが何か隠していることを察した。その怪しい言動から、トラヴィスの生活を丸々変えさせる出来事があったのではないのかと想像する。

いつの間にか俺は推理を始めていた。それはトラヴィスという人物のことをあまり好んでいないことから始めているのかもしれない。この問題にはおそらくトラヴィスからの回答はないだろう。

「応用問題だ」

おれは呟いた。

しかしトラヴィスは彼の内心の感情を読み取ることさえできれば、全てのことが理解できる魅力のない人間だ。揉めごとは役員会とトラヴィス個人で起きている問題なのか、役員会とトラヴィスの教師たちとの間で起きているのか探ってみることにした。

「教師たちは役員会を嫌っているのか」

ところが、どちらか答えることよりも、トラヴィスは説明をしだした。

「役員会は子供が社会に出てから出くわす問題を分かっていない。それを経験してきた俺が証明出来る」

トラヴィスが良くわからない話をしているところで二回ノックする音が聞こえてきた。

「誰かが到着したみたいだぞ」