第五章 読書

思い出に残る本との出会い

読書と言えば小学校時代から本好きであった。多読というほどではないが、今でも実家には「少年少女文学全集」が三十巻ほどある。これを喜んで読んだものだった。純粋な心に響いた本。その他もあるが中学生になった時、竹山道雄『ビルマの竪琴』の単行本を読み、感動は大きかった。ただサラリーマン生活を長く勤め、ゆっくりと腰を据えて読むことは暫くなかった。

読書の良さは思惟だ。少年時代にはこれが不十分で文章読解や、世の中の出来事への理解が、表面的だ。戦争といっても日本史、世界史を教科書で学ぶだけ。さらに宗教ときたら遠く離れた存在で、大乗仏教、小乗仏教等、とんと見当がつかない。なぜ日本軍はビルマ、シンガポール等、南方戦線に、向かったのか、支那、ロシアとの戦争は? 今から思えば無理からぬことかもしれない。

折も折、インターネットでこのエッセイ募集を知り、頭を整理して見るには良い機会と思った。当然もう一度読み返す。古い百二十円の新潮文庫。そこには深遠な作者の半体験が綴られ、主人公、水島上等兵の微妙な心理の変遷が描かれていた。隊長と共に行軍し、イギリス軍と交戦する様は、さながら臨場感溢れる描写だった。これが童話として発刊されたというから驚く。

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