縁の下の知力持ち

西暦二〇二X年。

未曽有の大型彗星が、地球に急接近。人類は愚かな戦争をやめ、総力を挙げて粉砕にかかりますが、まるで歯が立ちません。万策尽きた今、来たる衝突を天命と受け入れ——

BANG!!

——危難は去りました。地球から放たれた極太レーザー砲が、脅威を一掃したのです。

民衆は安堵と共に、おそれをなしました。どこの国があんな超兵器を……

各国が躍起になって出処を調べますと、どうも日本が臭い。レーザーが放たれたと同時、ある場所から強力なエネルギー反応が検出されたのです。諸国は日本を叱責!

「反戦反核を訴えながら、裏ではあんな切り札を……。恥を知れ!」

無論日本は全面否定。舌戦の末、各国の要人が日本へ視察訪問することになりました。矛先は郊外にある、築八十年の無人の洋館。この廃屋が、エネルギーの出処です。

隈なく捜すも、兵器らしい兵器は見つからず。視察団は首を傾げ、渋々帰国しました。

彼らが壁穴の奥の奥まで調べていれば、主の存在に気づいたかもしれません。齢千歳を超える、ネズミの長老。人智を超越し、歴史上のあらゆる難局を、人知れず解決してきました。津波を止めたり、神風を吹かせたり……。このオンボロ洋館も、中身はれっきとした電子要塞。レーザー砲は、煙突から放たれたものです。

これら天恵を人類が使いこなすのは時期尚早。見せびらかしたり、威嚇したり、傷つけあったりするうちは、あぶなっかしくて。ねぇ長老? よくいいますでしょう。知らぬが仏と。