~消え逝く命~

凛は、まひるが酷く不安に陥っているのを感じていた。そして、何か良く無い事がヒカリに起こっているのを感じたので、まひるに電話した。

何度目かのコールで、まひるが電話に出た。今にも泣き出しそうな震えた声で「ヒカリの意識が戻らない」と伝えてきたので、凛はすぐさままひるの元に向かった。

まひるは、青ざめた表情で原因が分からないと、震えながら凛に伝えた。このまま意識が戻らないと命の危険がヒカリに迫っている事は凛にも分かった。凛は優しくまひるを包み込む様に抱き寄せた。

何日も2人は病院に泊まり込みヒカリを見守ったが、一向に良くならなかった。身体の小さなヒカリにとって、こん睡状態が続いる事は死を目前にしている様だった。

まひるの身体も、心も限界まできていると凛は感じた。

ある日、凛は何かを決意した様子で、病室に居るまひるを強く抱きしめ、「ヒカリは大丈夫だから。俺がヒカリを守るから。これからも、まひるとヒカリは、俺が守っていくから、少し休む様に」と、まひるに言葉をかけ、病室のソファーに座らせ、まひるの冷たくなった手を握りしめた。しかし凛が少しでも目を離すと、まひるはベッドに横たわっているヒカリの側に居た。

凛は静かに病室を抜け出し屋上へ上がって行った。凛は、静かに目を閉じ、心でヒカリに話しかけた。

「ヒカリ、聞こえる?  ヒカリ聞こえる?」

何度か声をかけた時だった。

「凛?」と、聞こえた。凛は優しくヒカリに話しかけた。

「ヒカリ、何処か辛い所は無い?」

ヒカリは不安そうに「目が覚めないの。凛、私どうしたの? まひるに逢いたい。凛の側に今、何故行けないの?」

凛は静かに、そして優しく話しかけた。

「大丈夫だよ、目が覚めるから。遠くに小さな光が見えるかい? 頑張ってその光に向かって歩くんだよ」

ヒカリは弱々しげに、

「見えないよ、何も見えない。凛、怖いよ」

「大丈夫。よく見てご覧。ヒカリには見えてくるはずだよ。僕が側に居るから」

すると、ヒカリが「見えたよ」と、答えた。

凛はヒカリに話し続けた。

「頑張って歩くんだよ、ヒカリ。歩きながら聞いて欲しい事があるんだ。ヒカリがそこを抜けた時、まひるが居るから。これからは2人で頑張っていくんだよ」

ヒカリは、凛に聞き直した。

「2人? 其処には、凛が居ないの? やだよ、凛と3人で居たいよ」

凛は優しく話しかけ、

「其処には僕は居ないと思う。でも、君たちが、僕の事を忘れないでいてくれたら、いつか会える日が来るから。君たちが悲しまない様に、僕はいつも近くに居るから。忘れないで」

と、ヒカリに話した。