老化と加齢現象との異同

人間は約60兆個ないしは100兆個の細胞によって構成されていると言われます。その細胞は、日々再生され続けていますが、中には元通りに再生されないものも、あります。

細胞が核分裂する際に、DNAの染色体の一部(ほとんどは末端部分)が、欠落してしまい、細胞分裂前の細胞に再生するための、いわば設計図がなくなる事が原因だと考えられています。再生出来ない細胞は死に絶え、子孫を残せなくなり、細胞の総数が減少してしまいます。

その結果、細胞群によって構成されている組織・器官の機能が低下してしまいます。これが老化現象なのです。

この染色体の損傷・欠落が起きる原因としては、汚染された空気中の有毒物質・オゾン層破壊による紫外線の増加・タバコの煙……等が考えられています。

私は、活性酸素の影響も原因になると考えます。

人間は、生命活動をするために、体外から飲食として取り入れたエネルギーを燃焼させています。燃焼が完全燃焼であれば良いのですが、全体の数パーセントが不完全燃焼となっていると考えられています。この燃えカスが活性酸素を発生させます。この活性酸素は、不帯電子の性質により、安定している正常細胞から電子を奪って自らは安定しようとします。

電子を奪われた正常細胞は、設計図を失った細胞となり再生能力が失われます。その結果、組織や器官の機能が低下します。これが老化現象です。

老化現象と加齢現象とは、同じものではありません。

加齢により、細胞分裂能力は減退します。印刷物のコピーにコピーを数多くした場合にだんだん色がふやけて薄くなるようなものです。細胞の総数は減少します。これが加齢現象です。

これに対して、老化現象は必ずしも老人に特有のものではありません。打撲や外科的外傷や激しすぎる運動、などで発生する活性酸素は、若年層の人にも影響を与えます。

個々の細胞レベルの老化と、人間全体レベルの老化とは区別すべきです。活性酸素の発生をなるべく少なくするため、飲食と紫外線に留意する必要があります。ストレスなく育った動植物を摂取するようにして、腐ったものや、炭化したものは避け、日頃から過度の紫外線は浴びない事に注意することが大事です。