第1章  思い通りの人生をデザインするための「人間力」

ルールその2 方向を定めること

ここは変人ポーの話をそのまま引用することにしよう。

例えばとらがパリに行きたかったとする。でも、パリに行くという方向を定めない限りは当たり前だがパリには行けないな。それと同じで、人生も方向を定めることは重要なことではある。その方向が数度ずれるだけで、ローマに到着するかもしれない、ベルリンに到着するかもしれない。

しかし、それで良いのだ。ダイレクトにパリに到着しなくても良いのだ。ローマでもベルリンでも、着いたらそこからローカルバスに乗ってパリに向かえば良いのだ。むしろ、ローマを経由したことにより、ローマの美しさも発見できるだろう。もしかしたら、回り道したベルリンで一生を変えるほどの出逢いがあるかもしれない。

人生とは、はじめからすべてがプラン通りにいくものでもない、むしろプラン通りにいかないのが人生なのだから、その都度軌道修正していけば良い。しかし、方向を定めることすらしないと、気がついたらブラジルのリオ・デ・ジャネイロにいることになるかもしれないのだ。方向を定めないと自分がぼんやりでも想像していた未来と真逆の方向へ行ってしまうこともあるわけだ。

ブラジルの魅力も捨てがたいが、真逆の方向からの軌道修正は時間がかかるのでスマートなやり方とは思えない。方向を定めることは「目標を設定する」、「願望を明確にする」といった言葉でどの自己啓発本でも紹介されているが、その終わりまで書いている本はあまりないように思われる。

つまり、目的地のパリに行くことだけを考えて飛行機に乗り、到着するシャルル・ド・ゴール空港を視野に入れないということだ。するとどうなるか。パリ付近の上空まで来たは良いが、空港がどこだかわからないためにさまようことになるかもしれない。忘れてはならない、自分の人生のパイロットは、自分だということを。

飛ぶことが目的ではなく、パリに行くことが目的でもなく、パリに行くからには「パリに到着してから何をするか」も当然あるはず。そして、それが例えば旅行なら、帰りの日程もあるはずなのだ。

そして変人ポーは最後にこう締めくくった。

「そこまで考えることだ。考えて方向が定まらなくても心配は要らないよ。すぐに見つかる人もいるし、60歳になってからそれが見つかる人もいる。大切なのは、考え続けることだ。そうすれば、いつかきっと、見つかる。それに、パリを目指しているうちにロンドンに行きたくなるかもしれないしな」