超変人? の父親

その父親という人は、私も、多少は知っている人なのだが、これも、又、「変人」と言ってもいい位に極端な人であった。

普通に会社に通い、家族の生活を支えてはいたが、妻には、ぎりっぎりの少額の生活費しか出さない。B介君の話によると、その父親は日用品の買い物に行く時は、近所のスーパーの調味料のネダンなどを全てリストアップしておき、一円でも安い店に行くのだという。

数種の買い物がある場合は何軒も回ることになる。しかも、交通の不便な所に住んでいるにもかかわらず、「車は高い」と“足”はいつも自転車である。たしかに車で何軒も回るのでは節約にはならない。人力(・・)だからこそ「安い」と言えるのだろうが。

夏休みなどには、“人並”に家族を二、三泊の旅行に連れて行ったらしいが、彼は温泉に泊まると一日に8回も入るのだという。

「8回って、ウソでしょ、そんな!」という私の言葉に、Bさんは、「あんまり何回も入るから数えていた」と言うのだ。

そして、Bさんの夫は、何回も入ったあと「これで大分、元をとったな…」と呟いたりするのだという。

温泉旅館の「入浴のみ」というのは、その相場はホテルによって違いはあるかもしれないが、8回分なら一万円以上になると思われるが、Bさんの夫は、そういう計算をするのだろうか? 体育会系で身体が丈夫なので、やり通せるのだろうが。

温泉に一人で何回も入るのは、別に家族に迷惑をかける事ではない。だが、幼児とか小学生を子供の疲れた姿をものともせずに観光地をひきずり回すのは、どうかと思った。

「たまに旅行とか行ったけど、疲れるだけで全然、楽しくなくて……」と、B介君は、問わず語りで、時々、自分の“身の上”を話してくれた。

「旅館の朝食は、一番早い時間のを食べて……」

「いろいろ歩き回っているうちに、お昼過ぎになると、もう、疲れてボーッとして来て、どこを、どう歩いているのか分かんなくなるんだ」

「やっと夕方、旅館について、やれやれと思うと、お父さんは『まだ、回り足りない』とか言ったりしていて……」