「こんにちは」

「いらっしゃい」

「すいませんが瓦版に載せてもらいたいことがあるのですが」

「何をだい。なんか、面白い話でも持って来たかい。お客が飛びつくような面白い記事なら載せるよ」

「面白い記事とは……」

「例えば、金になるような、殺しとか盗賊とか。盗賊荒らしとか。御新造さんと丁稚の心中。それとも、近所の猫が犬を産んだとかだな。まぁ、そぅ言った話なら載せてやるよ」

「違います。廓に瘡毒がなくなった事です」

「それは初耳だな。確かに今までにない話だよ」

「記事になりますか」

「大いになるよ」

「では、載せてもらえますか」

「いいけど、瘡毒がなくなったいきさつはなんだい」

「こうです」と黒鉄屋で治した話をした。

「そうかい」

「それで、お願いできますか」

「何処にも話してはいないだろうな」

「はい。ここが初めてです」

「それなら売れるから、載せて大いに宣伝するよ」

「お願いします」

「で、おめぇさんの名前は」

「富司洞泉と、申します」

「わっしは、書き売り屋佐吉だよ」

「そうですか。これからもあると思いますので、その時もお願いします」

「で、何処に住んでいるんだい」

「廓です」

「じや、刷り上がったら、即撒いて行くよ」

「宜しくお願いします」

「分かった」

「行ってきました」

「ご苦労さん。で、いくらだった」

「タダでした」

「それは良かったな」

【前回の記事を読む】「女郎なんて使い捨て」人道のない男、瘡毒を頑なに治療せず…