コミュニケーションの基本は悩みごとを聞くこと

もう一つの重要な取引先として、現在にいたるまでおつきあいいただいているT大学についても、お話ししましょう。

前述したように、T大学は総合大学。学校全体のシステムを管理する部署へのアプローチとは別に、学部ごとに働きかける必要がありました。各学部のシステムを使うのは、教授、准教授、助教などの職にある先生方です。さらに医学部の先生方と、理工学部の先生方では、ネットワークシステムに求めるものが違います。つまり、ニーズは学部によって異なるのです。

こまごまと違うニーズを汲み上げるためには、学部のシステム管理に携わっている先生に会ってお話を聞くのがいちばんです。私がそのためにやったことは、当たり前のことですが、秘書の方へのアプローチでした。

重要なポジションにいる先生方には必ず秘書がついています。その秘書さんのお困りごとを聞くことからはじめたのです。

「どうですか? パソコンを使っていて困ったこととか、こういうことができたらいいな、みたいなことはなにかありませんか?」

そう、お聞きすると、なにかしら悩みごとを打ち明けられます。そして、それは私でも提案できるものがほとんど。提案書っぽいものを1枚にまとめて持っていき、「こういうことです」と提示します。

たとえば、いまでこそグーグルカレンダーは当たり前に使われていますけれど、当時はまだ出はじめたばかりでした。グーグルカレンダーの共有の仕方とか、あまり知られていなかったことを説明するわけです。

「こうすれば、先生とスケジュール共有ができますよ」

「あっ、これがしたかったんですよ」

多くの方に、たいへん喜ばれました。

「じゃあ、次は竹本さんから買いますので、これ見積もりしてください」

このように、必要な備品の注文をまずいただきました。