プロローグ 銀行が融資してくれない!

GIGAスクール構想参画に立ちふさがった障壁

どうしても必要だった12億円

その日、徳島市内には初秋の青空が広がっていました。秋晴れのさわやかな日だというのに、心のなかに湧き上がるなんともやりきれない思いを吹き払おうと、私は車の窓を全開にして清新な空気を車内に取り込みながら、営業車を運転していました。

先ほどまでのやり取りを思い出すと、ふつふつと怒りがこみ上げてきます。運転が荒くなっていることに気がついた私は、路肩に車を停めて頭を冷やそうとしました。けれども、やはりすぐには冷静になれません。

つい数週間前、私が経営するアジア合同会社は、GIGAスクール構想参画事業として、徳島県下の小中学校にタブレット6万台を納入する事業を落札しました。「文部科学省が推奨するタブレットよりもハイスペックのものを低価格で徳島県教育委員会に提供する」ために、日本では無名の中国メーカーと折衝を重ね、競争入札でつかみ取った念願のビッグビジネスです。

メーカーとの話を詰め、事業資金の融資を正式に依頼する段で暗雲がたれ込めました。つきあいのあったA銀行が「融資できない」と言うのです。不穏な兆しはありました。落札したことを担当者に連絡したあと、数日連絡がなかったのです。私が電話をすると、担当者は恐縮しながら、しかし、はっきりと言いました。

「すみません。融資できません」

私は絶句しました。「すみません」で済む話ではないし、これまで打ち合わせを重ね、言われるままに資料を提出してきたのはなんだったのか。

パソコンメーカーであるCHUWI(ツーウェイ)からタブレットを購入するために必要な資金は12億円。落札した以上、なにがなんでもタブレットは納入しなければならないのです。

(これでは(らち)が明かない。支店長に直談判しよう)

A銀行T支店に駆けつけると、支店長室に招かれ、ソファに腰かけるより先に口を開いていました。

「話が違うじゃないですか!」

できるだけ落ちついて話そうと思っていたものの、怒気をはらんでいたのでしょう。支店長は申し訳なさそうに顔を伏せ、そして顔を上げて次に言った言葉を生涯忘れることはないと思います。

「うちの審査部が〈そんなバッタモンみたいなタブレットに融資なんかできるわけないでしょ〉と言うんですよ。どうしようもないんです。申し訳ありません」

それまでは、「よその銀行とつきあいをしないでほしい」と言っていた支店長に、「よその銀行から融資を受けてはどうか」と言われ、怒りと絶望に青ざめながら、私はA銀行T支店をあとにしたのでした。

「なにがわかるんだ。いまに見てるがいい」

四車線道路の路肩に停めた車のなかで底知れない不安と戦いながら、私はそう声に出していました。