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夜中に目が覚めて、辺りを見ると、光が見えた。その光は、少しずつ自分のほうに近づいてくる。動けずに見ていると、光の中に、首と両手両足のない胴体が見えた、と。だが、それを聞いても、警察もどうしたらいいのか分からず、神社に相談してみてはどうかと言ったが、男は神社に行く前に、変死体となって発見された。その後も光を見たものは全員死んだが、いつの間にか収束していき、やがて忘れられていった。

光が現れたときに対処法としては、カシマさんと三回唱えるとか、腕をよこせと言われたらこう答える、足をよこせと言われたら……といったことが書かれている。

そして、この話を聞いた人のところに、カシマさんが現れる、とも。

伏見も言っていたが、確かに有名な都市伝説らしい。

いくつかのウェブサイトを見たが、細部の表現に違いはあれど、内容はほとんど同じだった。が、所詮は作り話。実際には、こんなことはありえない。

それに、もし伏見が言っていたように、葵の失踪がカシマさんの仕業なら、一般に流布している話とは異なる。ネットにある通りなら、行方不明ではなく……

そこまで考えて、愛瞳は頭を横に振った。

考えたくない。

そんなことがあるわけがない。

でも、じゃあ葵はいったい、どこに行ってしまったのだろう。自主的に失踪したわけじゃないなら、誰かが? 現実的に考えるなら、誰かに誘拐されたと考えるのが、一番自然だろう。そんな非日常的なことが、自分の身近で起こること自体、信じられないが、都市伝説の妖怪?に連れ去られたと考えるより、納得できる。

「これ……」

愛瞳は思わず、口を開けたまま固まった。

誘拐されたとするなら、谷山が言っていた、多数の行方不明者が出ているという事件と関係があるかもしれないと、ネットの記事やニュースを見ていると、あるSNSに書かれた、友人が行方不明ですという投稿が目に止まった。個人が自由に情報を発信できるネット社会だからこそ、そういった情報はSNSに集まる。中にはフェイクもあるが、仕事をする上でも役立つ情報を拾えることもある。

短い文章で情報を発信するそのSNSでは、行方不明事件についての情報は、ニュースのリンクを貼ってあったり、適当な感想が書かれていたりするるのがほとんどだが、その投稿だけは、当事者目線で書かれていた。榎坂町周辺と書いてある地域も、自分が住んでいる場所から遠くない。

何人かが拡散しているが、それほど関心は集まっていないらしい。投稿者は、フォロワーがそんなにいるわけでもないし、投稿の内容が正しいかどうか、判断できる材料もないから、それほど広がっていないのは当然と言えるかもしれないが、愛瞳はなんとなく気になった。

「直接連絡取ってみようかな。詳しく聞いて、怪しかったら途中でブロックすればいいし……」

もし投稿内容が本当だったら、何か新しい情報が得られるかもしれない。ダメそうなら連絡を止めればいいし、やってみる価値はある……愛瞳はそう自分を納得させると、投稿者にダイレクトメッセージを送った。

「そんなすぐにはこないよね、返信……」

返信を待つ間、まだ見ていないニュースサイトをチェックしたり、他にも同じような状況になっている人がいないかどうか調べたが、愛瞳が望むようなものはなかった。