【前回の記事を読む】詩集「まかろんのおもちゃ箱」より三編

【雨の季節】に送る詩

「灰色の空気」

不機嫌な空 不機嫌な空気

不機嫌な二人が部屋を埋める

二人には分かっている

どこにいようと この空気から

逃れられはしないのだと

不機嫌な空 不機嫌な空気

なぜ別れないのかと人はいぶかる

人は分かっていない

滴るこの灰色の空気だけが

僕らをつなぎ 形作っているのを

僕らは互いの目を覗きこむ

互いの目の中にある罪を

僕らは罪をなすりつけ合う

そして僕らは どこまでも

灰色の空気の中 堕ちていくんだ

不機嫌な空 不機嫌な空気

二人の罪が部屋を埋める

どちらも互いを解放しない

だって僕らは僕らの罪を

必要としているのだから

僕は君の中に僕の罪を(君は僕の中に君の罪を)

互いを餌に増殖する 甘い蜜

だから僕らは互いを必要とする

そして僕らは どこまでも

灰色の空気の中 堕ちていくんだ