【前回の記事を読む】弱り切った日本経済を立て直す「2つの方法」とは?

第一章 日本経済の分析

財政再建をするためのアプローチの仕方(考え方)

まず、日本のこの莫大な財政赤字を解決するためには、正確にこの問題の本質を見抜き、財政再建のための明確な基準を設ける必要があります。しかし実際には、財務省や政治家にとって都合の良い話ほど世間では多く広まってしまうもので、なかなか問題の本質に迫るような議論が少ないのがこの日本の残念な実情です。

その中でもとりわけこれはひどいなと感じさせる話に、日本の借金の総額を国民一人当たりで割り、日本の借金の大きさを説明する話があります。

二〇二一年二月十一日の中部経済新聞の記事によれば、日本政府及び地方の借金は二〇二〇年十二月の段階で千二百十二兆四千六百八十億円にものぼり、国民一人当たりでは約九百八十三万円にもなるそうです。

確かにこの話は間違ってはいませんが、国や政府にかかわらず会社などの組織の悪化した財務内容を改善しようとするならば、このような見方ではけっして借金問題を改善できないばかりか、時として変な勘違いすら招きかねず、それによって間違った決定を下す事にもつながってしまいます。

まず、この話を聞いた時の私の第一印象は、「借金とは毎年少しずつ返済していき、いずれは残高をゼロにしなければならないもので、今後、国民一人当たりに一千万円近くもの負担を強いなければならないので、消費税の増税は必要な事なのだ」というものでした。

しかし残念ですが、こういった発想では、間違いなく国の借金が増える事はあっても、一円も減らす事はできません。その証拠に、今まで政府は消費税率をたびたび上げ続けてきましたが、いまだ日本の財政は再建のメドすら立ってはいないのです。普通に考えても、国の税収が約六十五兆円ぽっちしかないのに、まともなやり方でこの莫大な借金を返済できるはずがありません。