「あ、そうだ」

光が思いついたように話す。

「嶺さぁ、フランケンの医者のやつとか特殊な漫画好きじゃん。なら、特殊な映画も楽しめるんじゃね？」

「映画？　う〜ん……」

映画は特に好きでも嫌いでもなく、たまに作業中に流し見したりする程度であまりピンと来ていない。

「映画ってスゲェんだぜ！　映像、演出、演技、音楽のプロの合作芸術が1000円台で観られるんだぜ！」

「うんうん」

「しかも、計算し尽くされた立体音響で特大画面の映画館で見れば楽しめるじゃん」

「ア〜……そう言われれば、いいかも……」

確かに人が集まるけどみんな静かに観るし、感染原因になるくしゃみや唾液の飛沫も飛ばないし、いい案かもしれない。

「なんか探して今度の休みにどこか行ってみる。光ちゃんありがと〜」

「おう、またな！」

電話を切ると早速映画について検索してみる。

（映画館かぁ〜……）

TVCMで放送される予告編以外にも、結構、映画が作られているのを知る。

（コレでもない……アレでもない……。有名なのはテレビやサブスクで観られるし……。マニアックなタイトルかぁ……。う〜ん）

検索ワードを変えながら10ページも20ページも検索していると、漫画の新しい作品を検索するみたいで楽しくなってくる。

頭の中で様々な情報が駆け巡り、脳内会議が始まる。

（白黒の古い映画……。う〜ん、古過ぎて寝ちゃいそう……。ピンと来ないな。B級サメ映画……。う〜ん、技術的にツッコミどころ多くて疲れそう）

ああでもないこうでもないと考えつつ検索画面をスクロールしていると、ふと鮮やかなタイトル画面に目が止まる。

（派手な色のきのこ〜)

予告編を再生して、鮮やかなきのこの成長のタイムプラスをアートのように表現した予告を見てると、子供の頃の記憶が蘇ってきた。

「うんめぞぉ、いっぱいけ！」(訳：美味しいからいっぱい食べな！)

（亡くなったじいちゃんが山から茶色いきのこを採ってきて、汁物にしてもらって食べたっけな……）

何のきのこかわからないけど美味しかったのは覚えている。

（きのこの映画かぁ……。敵を倒すわけでも恋人と結ばれるわけでもないし……。どんな映画なんだろ……）

想像を広げる内にだんだんと内容が気になってくる。

（よ〜し、コレに決めた。次の休日に映画『ワンダフルなきのこの世界』を観に行こう）