人間の真価は、順風満帆(じゅんぷうまんぱん)の時ではなく、逆境の時にどう対処するかにあるのではないだろうか? 「折れない心」を作ることは、人間、いや全ての生物が生きていく上での最重要なテーマだと思うのだがいかがだろうか? ただ一つ、はっきり言えることは、学校や塾での知識の吸収だけに偏かたよっていては「折れない心」を身につけることはできないということだろう。

また、スポーツをすれば身につけられるというのも真理ではないだろう。そうでないと、現代の日本社会のように百万人を超える人々が家に引きこもる状況が生まれるはずがない。

昨日、この家の家族と一緒にテレビ番組でドラマを見ていたら、「引きこもり」の青年が主人公になっていた。父親は、厳格(げんかく)な高校教師という設定だ。息子は、大学を卒業後、ファミリーレストランの店長として活躍していたが、本社の上司から叱責されたことをきっかけに会社を辞め、十年間自分の部屋に引きこもっているらしい。

息子は、トイレと風呂以外は部屋に引きこもっている。家族は、朝夕お盆に食事を載せて、息子の部屋のドアの前に置く。息子は食事を済ますと、お盆に載せて、部屋の外に置く。家族は、その食器を引き取りに来る。

息子は、時々夜中に自転車に乗って、近くのコンビニに漫画本を買いに行く。お金は、家族が玄関の下駄箱の上に小さな箱を用意して中に数千円ほど入れておく。息子が外に買い物に出たい時にいつでもお金を持っていけるようにとの配慮からだ。

このドラマを吾輩も一緒に見ていて、非常に多くのことを考えさせられた。吾輩たち犬も子供を産み、育てる。しかし、成長した犬たちが「引きこもる」という前例はない。ゴリラもライオンもパンダも引きこもったという話は聞いたことがない。してみると、「引きこもる」という行動は人間という生物独特の行動様式のようだ。

もちろん、全ての人間が引きこもるわけではなく、一部の人間が引きこもるようだ。一部とはいっても、令和二年現在の日本には、約百万人の引きこもりがいるそうだから、十人~二十人程度というような桁とは次元が違う。