人間の社会を観察していると、上司からのキツイ叱責、会社の倒産による失業、不景気による希望退職による転職など、失意のどん底に(おちい)る場面があるようである。これらが起こるのは、ご主人の言葉によると、「資本主義社会の常」だそうだ。

ご主人も現在は公務員として中学校で英語の教員をしているが、若い頃は民間企業で働いた経験もあるし、失業保険を受給していた時期もあるらしく、資本主義制度の荒波に()まれ、骨の髄まで資本主義の厳しさを知ったらしい。

かといって共産主義においては、一生懸命に働いても怠けて働かなくても同じ給料なので一生懸命に働くことが馬鹿馬鹿しくなり、経済の停滞が著しく、怠け者が増え、ソビエト社会主義共和国連邦及び旧東欧圏の国々の経済は破綻(はたん)したそうだ。

中国では、財産の一部私有を認めたために経済が著いちじるしく発展したそうだが、一党独裁が強化され、言論の自由もない恐怖政治が行なわれているらしい。

吾輩のような犬には思いも及ばないが、人間は「布団乾燥機」のような素晴らしい文明の利器を発明してきたのに、こと社会制度、経済制度においては、まだまだ完成の域にはほど遠いのではないだろうか?漱石が生きた時代には、日本には社会主義思想も広まっていなかった。

日本では、一九〇一年に社会主義政党である社会民主党が結成されたが、漱石は一九一六年に四十九歳で没した。彼だったら、人類のその後の歴史における経済制度の対立をどう考えただろうか? 「We are the 99%. (我々は、資本家から搾取(さくしゅ)されている側の九九%の人々だ)」と叫びながらアメリカのウォール街を行進しただろうか?

何はともあれ、強欲に支配されない社会や強権的独裁に陥らない社会を考え、作り上げる天才の出現を期待したい。