読者諸氏は世界の人口の〇・二%以下しかいないのに過去のノーベル賞において二〇%以上を獲得したユダヤ人の「痛めつけて育った幹からは、しなやかな枝は生えない」という格言をご存じだろうか?

世の中の多くの母親は、子供に、「有名中学校、有名高校、有名大学と進学すれば、将来高収入で安定した仕事に就くことができる。貧乏せずに一生過ごすことができる」と、よく話しているらしい。

しかし、先日リビングルームで家族と一緒にテレビ番組を見ていたら、有名国立大学を卒業した男性が社会人になって職場で上司に叱責(しっせき)されて心が折れ、家に引きこもっているという内容を放映していた。となると、多くの母親が子供に説諭している内容が正しくないことになる。

「有名中学校、有名高校、有名大学と進学すれば、将来高収入で安定した仕事に就くことができ、貧乏せずに一生を過ごす可能性が高くなる」と表現を改めるべきであろう。

人間が「知識を得る」ということは、もっと他の意味もあると思う。

ご主人が先日読んだユダヤ人の本には「教育の目的には、社会の役に立つ、自分の生計を立てる、人間として向上する、という三つがある」と書いてあったらしい。

ご主人が先日息子に熱弁をふるっていた内容は、「お父さんは、新しいことを学ぶことが楽しい。一種の感動だ。人は、一生何かを学ぼうとする心を持たねばならない。人は学問から英知、すなわち深遠な道理を知りうる。優れた知恵をつかむことができる」というものだった。要は、アリ地獄でバタバタともがく(あり)のように勉強に取り組むのは間違っているといいたかったようだ。

吾輩は犬だから難しいことは分からないが、新しいことを学ぶことが楽しみであるなら、人の一生は退屈せずに楽しいだろうということぐらいは予想ができる。

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