まだまだ足りない!

GIGAスクール構想のタブレット納入に目算がたった時点で、銀行との融資交渉もはじめていました。

A銀行に、「GIGAスクール構想参入事業を落札できたら、中国のメーカーからタブレットを買うから融資してほしい」と交渉すると、「そんなところからモノを買ってだいじょうぶか」というようなことを、当初から言われてはいたのです。

ということで、銀行はさまざまな資料を要求してきました。そのことをCHUWIの社長に伝えると、「ある、ある。あるよ!」と言って、自社に関するあらゆる資料を送ってきました。彼らも必死です。

A銀行と提携している公的金融機関の支店が上海市にあり、深圳市にあるCHUWIまで視察に行ってもいいかという話が出たときにも、先方は「もう、いつでも来てくれ」ということで、上海支店の方が視察に行ったと聞いています。CHUWIはとにかく協力的、審査に必要と言われた資料はすべて出し、現地での提携金融機関の視察も全面的に受け入れたわけです。

この時点で、私は問題なく融資を受けられるものと安心していました。

徳島県のGIGAスクール構想事業の入札は、令和3年(2021)1月納入分2万台、2月納入分3万台というふうに、何回かに分けて行われます。そして、アジア合同会社は、そのほとんどを落札することができました。

安価にハイスペックなタブレットPCを供給する戦略は大成功だったのです、この時点までは……。

何回めかの落札ができたときに、「そろそろ、モノを買わなきゃいけないから融資をしてくれませんか」と、A銀行の担当者に伝えたあとに衝撃的な事態に発展することになりました。落札したら融資をしてくれるはずの銀行の、私からすれば裏切りともいえる土壇場での手のひら返し。ショックというのが生やさしいほどの驚愕、落胆、怒りを覚えました。そのとき、私は真っ青な顔をしていたと思います。

A銀行T支店の支店長との面談から2週間後。

私はありとあらゆる伝手(つて)を頼って漕ぎつけた、T銀行の頭取との融資交渉に臨んでいました。ライバルのA銀行が融資を断ったという事情が利いたのでしょうか、はたまた、顔をつないでくださったどなたかの口利きだったのかもしれません。3億円を融資してもらえることになりました。

初めての取引にもかかわらず、よく融資してくれたと思います。いまでもたいへん感謝しています。けれども、まだ足りない。あと10億円弱が必要でした。

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