ドロセア E.オレムのセルフケア論

オレムはセルフケアという考えを示し、看護開発協議会に参与しながら、オレムの看護概念を基礎にした看護概念の公式化が図られ、“Concept Formalization in Nursing:Process and Product”(1973年)を出版した。

セルフケアの考え方の根底には、「人間とは理性的能力をもった心理的、生理的有機体である。人間は生物学的有機体として存在し、物理的、生理的構成要素をもつ環境のなかで、有機体として、また対象として反応する。

理性的に機能する存在として、人間は自己、他者および環境についての諸目的を表象化し、形成し、またこれら三者に基づいて行動する」と定義づけている。

セルフケアとセルフケア要件について、3つのタイプにセルフケアを区別している。セルフケア要件とは「個人が必要とする目的をもつセルフケアの種類を表現したもの」だとされている。

普遍的セルフケア要件とは

1.人生のあらゆる段階のすべての人間に共通するもので、年齢、発達段階、環境およびその他の要因によって変化する。この要件は生命過程および人間の構造や機能の統合性の維持ならびに一般的安寧に関連している。

2.発達的セルフケア要件とは、人間の発達過程および人生のさまざまな段階で生ずる状態や出来事(例えば未熟児、妊娠)、さらに発達を阻害するような出来事に関連している。

3.健康逸脱に対するセルフケア要件とは、遺伝的かつ体質的な欠陥や構造的・機能的逸脱、並びにそれらの影響や医学的診断、治療にかかわる。

シスター・カリスタ・ロイのロイ看護適応モデル

ヒーサー・A・アンドリュースとシスター・カリスター・ロイによる“Essentials of the Roy AdaptationModel”(1986年)が出版された。ロイ適応モデルも他の看護理論と同様、人間、環境、健康、看護を構成要素としていた。

ロイの適応モデルでは、「看護の受け手を全体的適応システム」としてみており、システムとは「いくつかの部分が結合して一つのセットになった物であり、ある目的のために全体として機能し、かつ各部分は相互に依存しながら全体として機能する」と説明する。

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