「生命をつくる元素」が均質に分布する宇宙

水素が核融合を起こし、原子がつながり合うと、どんどん大きな物質ができていきます。そして、巨大化した星が誕生し、核融合で膨らみ続ける恒星が無数に誕生します。核融合はエネルギーを出し続け、水素がヘリウムに入れ替わっていきます。そして、核融合が終わりに近づき、エネルギーを失った恒星は一気にしぼみ出します。恒星は大爆発を起こし、散り散りになります。これが、超新星爆発です。

また、水素が核融合してヘリウムになるとき、大量の中性子ができるのですが、爆発後も、中心部分には高密度に残ります。実は、中性子は核融合でできたエネルギーを運ぶ役割を持っているので、これを溜め込んでいます。もし、この密度が極度に高いと、中心部分は収縮するためのエネルギーが使われることになり、すべてを呑み込み続ける「ブラックホール」になります。

宇宙には二兆個もの銀河があり、その中心部にはブラックホールがあります。ブラックホールは、あらゆるものを呑み込み続ける力で銀河の求心力になり、星の安定運行を保証します。が、注目すべきは、とんでもない巨大ジェット噴射を発射し続ける、ということです。

ここで、宇宙で繰り返される超新星爆発と、ブラックホールの巨大ジェット噴射が、生命体の誕生に、どのような貢献をしてくれているか、ということを確認しておきます。もちろん、それは、協同の誕生につながる遠因でもあります。

超新星爆発は、大量の元素をつくってくれました。これらは、生命をつくる材料です。人体を構成する主要な元素で比較的多いのは、水をつくる「酸素(O)」(構成比65%)や「水素(H)」(同10%)、たんぱく質や炭水化物をつくる「炭素(C)」(同18%)です。まだあります。たんぱく質をつくる「窒素(N)」(同3%)、骨などをつくる「カルシウム(Ca)」(同1.5%)、DNAなどをつくる「リン(P)」(同1.0%)です。ここまでを合わせると、全体の98.5%を占めます。それ以外に、イオウ(S)、カリウム(K)、ナトリウム(Na)などの元素もあります。

大量に生産されたこれらの元素は、しかし、宇宙規模から考えれば、個別各所の超新星爆発だけでは、宇宙全体にうまく拡散されません。これを手助けしてくれたのが、ブラックホールの巨大ジェット噴射のようです。

銀河は宇宙に散らばっていて、その中心にブラックホールの巨大ジェット噴射があるのですから、まるで、宇宙で二兆個の超巨大扇風機が一斉にぶんぶん回るようにして、宇宙に偏在する膨大な元素を見事に攪拌(かくはん)してくれたのです。