第1章 「地球の協同はこうして誕生した」のはなし

宇宙と生命の「元素の誕生」

協同は、私たち人類だけのことではありません。それは、生命体全般に関わることです。しかも、地球生物だけなく、広く宇宙に存在し得る生命体全体のことでもあるのです。なぜなら、生命体は、元素でできていますが、こうした元素は、宇宙によって誕生しているからです。

もちろん、宇宙の生命体を説明することはできません。その代わり、宇宙のはじまりから元素の誕生、それが宇宙時間を経過して地球生命の誕生になり、その生物が協同を生み出すまでのはなしなら、何とかできそうですから、順に、はじめていきたいと思います。

さて、宇宙が誕生したのは、一三七億年前のことだそうです。ビッグバンによって、宇宙は、誕生と同時に、一兆度以上という高温になり、膨張をはじめましたが、それが少しずつ冷めていくと、宇宙を動き回る素粒子の中から、「電子」、「陽子」、「中性子」が誕生します。

さらに温度が下がっていくと、プラスの電荷をもつ陽子と、電荷を持たない中性子が結びつき、「原子核」ができます。ここまで、宇宙誕生からたった三分間のでき事だったそうです。

原子核の性質は、陽子の数できまります。たとえば、陽子一個は水素です。陽子二個になるとヘリウムに、三個がリチウムに、四個がベリリウムに、五個がホウ素に、六個が炭素という性質になるのです。最初に誕生した元素は水素(H)です。そして、これがぶつかり合って核融合を起こすと、ヘリウム(He)になります。

核融合が繰り返されることで、宇宙には、このふたつの元素が大量に存在することになり、ここから、様々な元素を生み出し、星をつくっていきます。宇宙誕生から三八万年経ち、温度が三千度まで下がると、原子核を構成する陽子が、宇宙を飛び回る電子を取り込み、「原子」が誕生します。

つまり、原子は、陽子・中性子・電子でできているのですが、原子の直径は一億分の一センチメートルで、中心にある原子核は、さらに、その一〇万分の一です。陽子と電子は、引き付け合いながら、一定の距離をとろうとします。

この微小な原子の世界をイメージすれば、原子核の周りを、十分な距離をとった電子が、雲が覆うように飛び回る、宇宙最小のドーム空間のようなものです。この形状の原子核どうしが、電子やイオンによって結びつくことによって、物質をつくります。原子の世界は、私たちが日頃に見る、銀河星雲の縮小版のように思えます。

この、原子核と電子でできた空間だらけの原子から、気の遠くなるような時間をかけて、協同が産声を上げるはずなのです。