【前回の記事を読む】動物をなでると脳が活発に?認知症予防の「もふもふ」効果

今役立つ認知症のアドバイス

認知症を疑う症状

その3 認知症のご近所トラブル

認知症高齢者が身近にいない一般社会で生活している方は、高齢者の認知症状によるトラブルにあっても、認知症が原因だとはなかなか気がつかないものです。

先日、私が銀行に行った際に目撃したトラブルです。高齢者の男性が通帳を失くしたようで、カウンターで中年の男性行員が対応していました。聞こえてくる内容では、どうも失くしたのはこれが初めてではないようです。行員さんは憤慨して、「何度も失くされると困るんです」「しょっちゅう新しい通帳をお出しすることはできません」「これからはうちではなく、ほかの銀行と取引をしてもらうようになるかもしれません」と、次第にイライラしている様子です。

高齢者の方の声は聞こえませんが、ほかの銀行はどこにあるのか、と聞いているようです。行員は、「知りません、別のところを探して下さい」と言っています。私は、きっと認知症で通帳を何度も失くしてしまうのだろう、と推測し、さらに金銭の管理もできなくなっているだろうから、家族に連絡して何とかしてもらったほうがいいかな、と思いました。

そこで、私が別のカウンターに呼ばれた際に、「あちらの方はたぶん認知症なので、地域包括支援センターに連絡してみて下さい」と小声でアドバイスしました。早速その通りにされたようで、後日、私がその銀行を訪れた際に、行員の方にお礼を言われました。

高齢化社会と言われて久しいわが国では、一人で生活している高齢者はかなりの人数に上ります。これらの人々は、自分で買い物やいろいろな支払い、病院通いや趣味の活動、人付き合いなどをされていると思われます。長年特に問題なく過ごしてきたのでしょうが、もし認知症が進んできたら、独力で日常生活を送ることが困難になり、家族の見守りや世話、または介護のサービスが必要になってきます。

日常生活動作を指す言葉には、介護の分野で使われている用語として、ADLとIADLがあります。ADLとは、Activity of Daily Livingの略で、基本的日常動作と訳され、食事、更衣、整容、排泄、入浴などを指します。IADLとは、Instrumental ADLの略で、手段的日常生活動作と訳され、ADLよりも複雑な動作である、買い物や洗濯などの家事全般、金銭管理、服薬管理、交通機関を使っての移動などが含まれます。

認知症が始まると、まずIADLがうまくできなくなり、さらに認知症状が進行してくるとADLにも障害が出てきます。IADLに障害が出てきた時点で、近所や地域の方が気づき、適切な報告や対処をすることが重要だと思われます。IADLの障害とは、具体的にはどんなことでしょうか?