例えば、今までできていた料理や家事がきちんとできなくなり、料理の味付けがおかしくなったり、調理器具がうまく使えなかったりします。鍋を焦がしたり、食材を冷蔵庫に入れっぱなしで腐らせたりします。また、日付けを覚えるのが苦手になり、予定した外出がその通りにできなくなります。

従って、病院に通院するのをやめたり、薬をきちんと飲めなくなったりします。買い物では、同じ物を何度も買ったり、逆に支払いをせずに商品を持っていこうとする場合などがあります。このようにいろいろな障害が出てくるわけですが、案外本人は困っていないことが多いようです。普通にご飯を食べて、きちんと薬も飲んで生活していると思い込んでいることが怏々としてあります。

さらに認知症状が中等度に進行すると、物盗られ妄想や幻覚、作話などが出てきます。物盗られ妄想は、お金や物を失くしても(実際は置き忘れが多いのですが)、「誰かが盗っていった」「泥棒が来た」などと思い込むことです。そのわりには深刻さがないことも特徴的です。

しゃべるのが好きな高齢者の場合には、近所の人に、「ごはんを食べていない」「死にたい」などと言って回る人もいます。食べていないと言うのは、食事をしたことを忘れてしまうからで、実際はちゃんと食べていたりします。「死にたい」と言うのは、本当にうつ病などで切羽詰まっているのか、実は心配されたり相手をしてほしいからなのか、判断に困るところです。

また、独居なのに「友達と住んでいる」と言ったり、逆に最近息子と住み始めたのに、「一人で住んでいる」と言い張ることもあります。物忘れが進行したという症状以外にも、理解力や判断力が低下し、現実認識ができなくなってきます。身近にいる高齢者に、これらの言動を見かけて認知症を疑ったら、そして家族などが面倒を見ている様子もなければ、地域包括支援センターや役所の高齢者福祉課などに報告や相談をして、対処してもらうのが良いと思います。