窃盗犯はいつの世にもはびこる市民生活を脅かす身近な犯罪で体感治安の指標とされる。職業的な常習窃盗犯が存在する限り、窃盗犯を専門とする捜査官は必死で犯人を割り出すことに専念し、必ず容疑者の居場所を突き止め、これの行動を確認し、アリバイを確認の上、犯罪を敢行していると断定してから、専従態勢を整え、執念を持って追い続け、必ず捕捉している。この捜査手法が「的割り捜査」、通称「MATOWARI」である。

これらの捜査を熟知している中條だからこそ、人並ならぬ窃盗犯捕捉への情熱と信念を持ち続けていた。まさに少年の頃の獣道に罠を仕掛ける(すべ)そのものが活かされた。

私は、機動捜査隊捜査主任当時から中條の犯人捕捉への執念に類似するところがあったのか、よく声をかけられ、略取誘拐事犯、企業恐喝事犯などの現場設定場所における犯人の捕捉ポイントとなる重要な箇所で必ず責任を持たされていた。

「鈴鹿部長刑事、一番大事なポストだ。犯人が現れるポイントだ。何とかしてくれるな」

「はい。しっかりやらせていただきます。絶対に取り逃がしません」

私自身、犯人を執念で追及し捕捉する。獲物を捕獲する仕事が大好きな部類であったから、捜査支援資機材、特に監視資機材を巧みに操る新たな捜査手法を自ら会得したいと感じ入るものがあった。テレビ番組の警察二四時版で、現場設定の恐喝事件の犯人を捕捉する場面が流された。この時は、私が主役になっていたので、しばらくはお手本とされる話題で尽きなかった。

「やっぱりいざという時には頼りになる。また頼むよ。訓練もしっかりやっておいてくれ」

「はい、現場配備で使っていただきありがとうございます。私も機械ものは大好きです」

あの頃は、ここぞとばかり自己アピールをしていたが、今では直轄の部下として仕え、映像捜査官スタッフの中心的な役割りを担うようになっている。現場の捜査支援要請には、先ず現場観察に始まり、手口分析、犯行予測、さらには犯人の行動などについて、自然に慣れ親しむような感覚で読み取り、それらをもとにした探知監視システム設置の業務を進めていたが、徐々に知識と技能が伝承されていった。

しかしながら、これらに気付いたのは、中條がこの指導職を飛ぶ鳥跡を濁さず、さわやかに離任してからで、自らが部下を指導しまとめ上げる立場となり、その責任から独り立ちした時であった。

その間、どんなに困難な苦しい現場に遭遇しても先駆者である中條の教えを忠実に自己の技量としながら、お互いに智恵を出し合い切磋琢磨して、究極の事件解決に結びつく実効のある撮像に臨んできたが、全てに探求心、探偵心を持って楽しく面白く共に歩んだ思いがある。私たち映像捜査官が、至誠をもって臨んだこれらの事犯を一つひとつ回想してみたい。

【前回の記事を読む】窃盗犯探知監視システム開発の原点は少年時代の「好奇心」

※本記事は、2019年5月刊行の書籍『映像捜査官 MATOWARI』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。