娘の留学に際しては、留学の費用の全てを克裕がだまって出してくれたのだ。二人とも三十代で家を建てるようになったので、立派に育ってくれて感謝である。克裕に感謝すると同時に、克裕の両親や私の両親に、お店に来てくださるお客様に、そしてマルセンを支えてくれるスタッフ全員に感謝である。

そして、克裕はすべて有言実行なのである。また、「二人の間で喧嘩は、禁止にしよう」とも言った。どんなささいな喧嘩でも、そこから離婚に繋がってしまうかもしれないからだ。おかげで、おだやかで幸せな生活を送ることができている。

そんな幸せな生活の中、二〇〇四年のある日、かかりつけ医の高山医院へ、健康診断の結果を聞きに行くという夫につきそって出かけた。彼の診察中、待合室で待っていると、看護師さんに、「奥様も、中にどうぞ」と言われ、先生の前に座る。

すると、「高橋さんは、肝臓の数値が悪いね。これ、C型肝炎の可能性が高いので、紹介状を書きましょう」と先生から言われた。『C型肝炎って、何だろう』と何だかポカンとしていると、克裕は、「運が悪いな」と言っている。