1998年12月18日 ヨーロッパ歴史訪問記中間総括(その2)

-ナショナリズム-

最初に旅行のコツについていくつか追加があります。1つは金曜日夕方の飛行機に乗ること。前回の中間報告の段階では土曜日早朝出発便利用が多かったのですが、最近の週末旅行では金曜日夕方の便を利用することが増えています。フライト料金に比べればホテル料金は大したコストではありませんし金曜日夕方便利用により土曜日朝から有効に観光できます。次に服装について運動靴を履くことで、私は1998年8月からナイキのエア・クッションを利用し始めましたが本当に快適です。1998年1月のプラハ、ジュネーブ、2月のドレスデン、ベルリンではチロリアン・シューズを使用しましたが、アウト・ドア用の運動靴なら雪道でも問題なく履きやすさも格別です。もう1つは旅行パックの活用です。前回の中間総括で手荷物で動き回っていることをお知らせしましたが、洗面用具、寝具等は在宅用とは別に1セット手荷物の中にいつも入れておくと旅行の都度準備する手間が省け忘れ物をすることもありません。最後にコツではなく注意事項を1つ、日本およびイギリスでは車が左側通行ですから歩行者が歩き出す時はまず右を見ますが、ヨーロッパ大陸では逆なため第1歩を踏み出してから左から車が来ることに気がつくことになります。幾ら注意しても身についた性癖は直りませんので外国で道路を渡る時にはくれぐれも気をつけるしかありません。

前回中間総括で宗教のことをお話ししましたが、この半年では突っ込み不足の感じです。ただ「始めに言葉ありき」 で民族、国民のアイデンティティにつき宗教と並んで言葉が極めて重要であると思います。最近アントニー・スミスの『ナショナリズムの生命力』を読みましたが、ナショナリズムは18世紀後半・末の産物で、西欧では国民国家はほとんど無計画の内に形成されたが西欧以外では国民国家はナショナリストの目的や運動の結果として出現したというのが論旨です(ヘンリー8世<在位1509年~1547年>によるイングランド国教会の設立はイングランドのナショナル・アイデンティティ確立の契機だそうですが、キャサリン・オブ・アラゴンが世継ぎを生んでいればなかった話で無計画というのは納得できます)。またナショナル・アイデンティティの要素は人種ではなく「様々な慣習と共通の出自を持った1つの共同体にあるという自覚」「主観的な意味で統一された文化的共同体」でその中ではやはり言葉が大きな要素を占めるようです。イギリスでもハンガリーでも人種的要素は国民性決定の決定的要因ではなくむしろ言語、宗教等の方が重要です。アメリカ合衆国はナショナリズムの強い国ですが、誰も人種的な要素を重視したりはしないでしょう。その意味ではアングロ・サクソン・システムはイギリス、アメリカを1つの政治文化共同体(今回のイラク空爆での英米一枚岩で見た通りで同僚の欧州監査室課長のQさんの持論は、半分冗談ですが、「イギリスはアメリカの51番目の州になるべき」とのこと)として見ればその覇権は過去200年にも及ぶわけで、塩野七生ではないですが「何故、アングロ・サクソン人(システム)だけが」とその理由を究明したくなるのは当然です。英語はアングロ・サクソン人だけのものではなく、古くはケルト人がいやいやながらも受け入れその後大英帝国の拡大に伴い世界に拡散していきました。ただその際には権力による強制だけでなく受け入れられるだけの普遍性もあったのかなと思います。