火星で長期にわたって生き続ける方法の模索が始まる。

月面基地との交信で地球の詳細な状況が次々と入ってくるが、絶望的で打ちひしがれるような内容ばかりである。月面基地の隊員は火星基地の隊員以上に切羽詰まっている。なぜなら彼らには火星基地のような自立生存機能がほとんどないからだ。

月基地では地球帰還が不可能となった時のために、自主生存の道の検討が始まった。

「生命維持班より報告します。酸素は地下水より電気分解して、当分は大丈夫で心配ありませんが問題は食料です。わずかにバイオ生産できますが、全員が維持できるまでには程遠い状況です。全員で1日分の食料を3回に分けて伸ばしたとしても2年が限界です。今バイオで食料の増産ができるか検討中です」

「設備班報告します。電気は太陽光などで何とか確保できますが、電気分解に使う水酸化ナトリウムや電極に使う銅や白金が今使っている分しかありません。これがなくなれば酸素ができなくなります。私たちも2年が限界と考えています」

そして月基地では耐乏生活に入ることとなった。2年は瞬く間に過ぎていったが地球とは何の連絡も取れない。

月から見る地球は半年、1年、2年と経過していくものの、雲が厚く地上を垣間見ることはできない。隊員たちも痩せこけて、もはや生きる気力もない状況に追い込まれた。

月軌道を回っていたプロミスは1年後には食料もなくなり地球軌道に向けて発進、地球軌道で待機していた2機のシャトルと地球基地に向けて暗雲立ち込める中に機首を向けたが、その後何の連絡もなく行方不明となった。

月基地にいる26名の隊員は、すでに2年が経過したが地球本部からは何の連絡もなく、地球の他の地域からも電波の発信されている様子がない。雲は厚く未だに地上を覗き見ることができない状況である。

地球からの補給がない月基地では食料も消耗品も残りわずかとなり、気力も限界がきた。火星基地とは連絡を取り合っているが、まず月基地から先発で地球の状況を現地探査することとなった。