1998年12月5・6日(土・日) アンダルシア紀行(グラナダ、セビリア)

-南国の太陽を浴びながら歴史の勉強-

晩秋のヨーロッパ南国観光シリーズの最終回はアルハンブラ(スペイン語ではアランブラ)宮殿で有名なグラナダとスペイン南部アンダルシア地方の中心都市セビリアです。先月観光したピーターバラ大聖堂で、ヘンリー8世(1509年~1547年)の最初の王妃キャサリン・オブ・アラゴンがグラナダのアルハンブラ宮殿で育てられたとの説明があり南国の太陽を浴びながら歴史の勉強もしようと思った次第です。

ピーターバラ大聖堂での展示によると6人の王妃(そのうち2人は姦通罪で処刑)を持ったことで有名なイングランド国王ヘンリー8世ではありますが、才媛と言われたキャサリン・オブ・アラゴンとの結婚生活は20年にもおよび残りの5人の王妃との結婚生活合計よりも長くメアリー1世(在位1553年~1558年)も生まれておりヘンリー8世が世継ぎほしさに中年になってからじたばたしなければ幸せな結婚生活を全うしたはずです。そうすればイングランド国教会も成立せず、スペインとイングランドが戦争をすることもなく……と、この時代の歴史は近代・現代の歴史より人間味に溢れているように思います。

 

グラナダは1492年にカトリック両王(※注1)イサベル1世(在位1474年~1504年)とフェルナンド2世(在位アラゴン王1479年~1516年、カスティーリャ王1474年~1504年)によって征服されるまでイベリア半島最後のイスラム王国の首都だった町で、この地方の観光ポイントの白眉でイスラム建築の最高傑作の1つと言われるアルハンブラ宮殿があります。

まだ他のイスラム諸国をよく見たわけでありませんが、イスタンブールのトプカプ宮殿との比較では明らかにアルハンブラ宮殿の方が上です。宮殿の壁面も天井もすべて装飾で埋め尽くされていますが、細かな文様の反復であり決して装飾過剰な印象はなく、ヴェルサイユ宮殿に代表されるヨーロッパ宮殿建築に比べるとむしろ日本建築に通じる繊細さ、簡素さに親近感すら感じるくらいです。

宮殿の至るところに池、噴水を配し巧みに水を利用しており、中庭(パティオ)を利用した建物の配置と言い東洋的な美意識を感じます。イスラム教徒の宮殿は絨毯に座る生活を前提としているので中庭(パティオ)を鑑賞する際は目線を低くすることが肝要です。

 
 

※注1)カトリック両王(【西】ReyesCatólicos)の称号はローマ教皇アレクサンデル6世(在位1492年~1503年)によって授けられました。