すぐに不自然な情景の原因に気づいた。

物に影がないのだ。つまり光源がないということだ。意識しなければ何ということもないのだが、影のない状態とは、一度気になりだすと結構不快に感じ、そればかりか目を閉じ続けるというのも苦痛なものである。普段通りに目を開いて見ても同様に見えることから、むしろこのほうが自然で快適と感じ、普通に目を開いて、

「よしこれでいこう。いいわ、さあどこへでも連れていってちょうだい」

態勢は整った。

見えている先には微かな光が差し込んでいる上に向かう道と、暗く地下へと続く道とが隣り合わせにあるのが認識できた。読んで字のごとく、進む先の明暗を分ける岐路になるのか、当然ながらこの場合は光のある上にいきたいものだ。

「下に向かって道なりに進みなさい」

期待を裏切って暗い地下へと誘導されていく。彼女の元では明日美の予知能力も機能しないとみえ、苦笑いしながら歩き出す。

明日美は古い映画で地底探検の冒険物語を見たことを思いだした。結局主人公たちは無事に生還を果たすのだが、そこには広大な地底世界に海が広がり、巨大きのこや恐竜といった奇怪な生物が登場するスペクタクル映画だった。そんな奇異なるものたちが待ち受けているのだろうか、妄想にも似た思いが浮かんでは消えてゆく。もっとも、すでに非現実的な現状に至っては、そんなことがあっても面白いかも、などという幻想を抱いてしまうのも至極当然のことだろう。

自分の心理状態の分析ができて観点が変わったのか、至るところに岩を削り取ったノミの痕が散見でき、人為的に造られた通路であることが見て取れた。一方、度々余震がやってきたが、何かが崩れるといった危険もなく、揺れもそう大きくも感じられない。地下とはそう悪くもないところなのかもしれないという気がしてくる。

※本記事は、2021年8月刊行の書籍『魏志倭人外伝』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。