この頃の授業 ~食うか食われるか!?

授業実施に当たり、最初に押さえておくべきことがあった。それは“授業スタイル”である。まずは「形」で、次に「中身」だ。

授業スタイルというものは、学校の実態により異なるが、私が着任した学校は、仮にどんなに興味深く好奇心をそそるような内容であったとしても、聴く姿勢、環境をつくってからでないと何事も始まらない学校だった。要は、聞く耳を持たない者に対しては、何を言っても無駄ということだった。そこで、まずは授業の“環境づくり”から始めた。

そして、何事も最初が肝心というが、年度当初の最初の授業は、1年のうちで“最大のエネルギー”を投入して臨んだ。なぜなら、教師と生徒の“力”関係がそこで決まってしまうからだった。もっというなら、“食うか食われるか”の瞬間がそこにあったからだ。

最初の授業で何を話し、何を示すのか。教える側と教わる側の関係、立ち位置を明確にし、指導者としての絶対性を植え付けるのである。それはあたかも“動物の調教”のようなものだった。

そして、縁起も担いだ。プロ野球などの勝負ごとに例えるなら、4月の“開幕戦”は必ず“勝負飯”を食し、その年の授業を始めた。私にとっての勝負飯とは、その時々の懐事情にもよるが、大抵「鰻重」か「かつ丼」と決めていた。