高齢の男性が若い女性の看護師や介護士にセクハラをした例が取り沙汰されることがあります。本人はセクハラのつもりがなくても、受けた相手がどう受け取るかによって判断されるのがハラスメント問題です。

認知症などで責任能力のない高齢者によるハラスメントで相手が深く傷つき、訴訟などにいたれば、慰謝料や損害賠償などの民事責任を取るのは監督責任者である家族です。また、これとは逆に男性の施設職員が高齢の女性に性的暴行を加えた事件もありました。高齢者の家族がハラスメントに加担した例も、一部新聞で話題になりました。

なぜ、こんなことが起こるのでしょう。

老人ホームはとても小さな閉鎖社会です。その密室性と入居者の認知能力の低下ゆえ、ときに人を人として敬えなくなるのかもしれません。

ハラスメントに加担する家族の心理は、専門家による事件の分析から理解するべきだと思いますが、「介護サービスにお金を払っているのだから、なにをしてもよい」と、とんでもない勘違いをする家族がいることも事実のようです。

こうした勘違いは論外とはいえ、要介護者を抱えて、先の見えない家族の焦燥感は相当なものです。「あと何か月、あと何年お金を払い続ければいいのか」という考えが、絶えず頭のなかにあることもまた事実なのです。そうしたプレッシャーがハラスメントなどに走る要因となっているのかもしれません。

介護業界は深刻な人手不足です。介護スタッフが追い込まれて心身を壊してしまうような現在の状況が、少しでも改善されることを願います。超高齢社会はもうすぐそこまで迫っています。どこかで大きな改革を行わないと、ますます人手不足が深刻になるのは明らかではないでしょうか。

※本記事は、2021年8月刊行の書籍『花びらは風にのって』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。