アステミゾール(ヒスマナール)とテルフェナジン(トリルダン)(図1、図2)

この2つの薬は現在は発売されていない抗ヒスタミン薬です。なぜ発売中止になったかというと心臓への悪影響があったためです。致死的な不整脈を引き起こし、死亡例まで出してしまったのです。21世紀に入る前後に相次いで発売中止になりました。

Nを持つ環状構造を頭と考えるとアステミゾールには2カ所、テルフェナジンには1カ所のオタマジャクシ構造が見えます。この2つに共通する部分はばらけた構造の真ん中部分にあるオタマジャクシ構造です。

[図1]アステミゾール
[図2]テルフェナジン

この頭にNを含む六角形の環状構造はピペリジン環と呼ばれています。この共通した構造が心臓に悪影響を与えるのかもしれません。ところで3のフェキソフェナジンの構造を見ていただくと分かるのですが、テルフェナジンに酷似しています。テルフェナジンの右端の1カ所がフェキソフェナジンではCO2H(カルボキシル基)に代わっているだけなのです。実はテルフェナジンが肝臓で代謝されて、より水溶性に変化したものがフェキソフェナジンで、フェキソフェナジンになるとなんと心臓への悪影響がなくなっているのです。

そうであるならば油に溶けやすい脂溶性の薬で、ばらけた構造の途中にピペリジン環を持っている薬は心臓に悪影響を与えやすいのかもしれないと思われるので、医薬品検索システムを利用して、構造の内部にピペリジン環を持ち、かつ心臓に副作用を持つ薬を探したところロピバカイン(血圧低下、徐脈、心室性不整脈)、フェンタニル(動悸、心室性期外収縮)、ドネペジル(QT延長、心室頻拍、心室細動)、パリペリドン/リスペリドン(心房細動、心室期外収縮)、ブロムペリドール(QT延長)、エバスチン(動悸、テルフェナジンの類薬)、ピモジド(心室頻拍、突然死)、イリノテカン(心室性期外収縮)、ロラタジン(頻脈、動悸)、モサプラミン(心室頻拍)、ベニジピン(徐脈、頻脈、期外収縮)、ロミタピド(心筋梗塞、動悸)、ハロペリドール(心室細動、心室頻拍)、ドンペリドン(QT延長)、パロキセチン(心悸亢進、頻脈)、ビラスチン(頻脈、QT延長)、リファブチン(心停止、心室細動)、ルパタジン(動悸、頻脈)などやたらと出てきました。

この結果に本当に意味があるのかまでは精査していませんが、分子構造の途中にあるピペリジン環には、心臓へ悪影響を与える可能性があるのではないかと思いました。

②H2受容体拮抗薬

もう一つのヒスタミン受容体拮抗薬は6成分ありますが代表的な4成分で構造を見てみましょう。

1.シメチジン(タガメット)(図3)

最初に市場に登場したH2受容体拮抗薬ですが、左端にヒスタミンと同じ頭を持ち、尻尾の途中に硫黄原子Sを持っています。頭の近くにSがあるのは、6成分中5成分に共通しています(例外はロキサチジン)。

[図3]シメチジン