「DV・虐待は、(中略)物理的客観的な証拠が残って提出できる割合は少ないから、(中略)裁判官が「あった」と積極的に認定することは難しい場合が少なくない。しかし、証拠の有無にかかわらず(中略)子どもの福祉を守るなら、監護裁判はむしろ予防原則に立って、安全リスクのある親の関わりを排除できなければならない」

ここでは、「科学的に証明されていなくても、予防的に規制する」ことを意味する「予防原則」が主張されており、弁護士の吉田容子氏も基本的に同様の主張をしています(吉田(2019))。

しかし、少し考えれば分かることですが、「予防原則に立つ」というのは、客観的な証拠がなくてもDVを積極的に認定するということですから、虚偽DVが大いにあり得るということを、当然に意味しています。ところが、「では、虚偽DVの存在を認めた上で、予防原則の観点からその必要性を肯定するということですね」と質問すると、今度は躍起になって、虚偽DVの存在を否定します。斉藤(2019)を見てみましょう。

「そもそもDV被害を受けていないのに、DVを受けたと主張する当事者がいるのであろうか。まず、筆者(注:斉藤氏)が知る限り、そのような調査が行われたことはない。実務上散見するのは、客観的にみてDV被害を受けているとみられるのに、被害者にDV被害の自覚がないケースである。その逆は経験がない。あるのは、自分はDV加害者でないのに、DV加害者呼ばわりされたという一方当事者の声である」

離婚裁判でDVの有無が問題になった場合、判決で「DVの存在は認められない」とされることはあっても、「DVの主張は虚偽である」とまで認定されることは、原則的にありません。

いくら審理を尽くしても、「虚偽ではなく証拠不十分」である論理的可能性が消滅することがない中で、そのような認定を行う必要性が存在しないからです。従って、「「DV被害を受けていない」という立証がされた事案」というのは基本的に存在しないのが当然なのであって、「そのような調査が存在しない」などということは何の根拠にもなりません。

また、虚偽DVで加害者とされた側が、虚偽DVの存在をはなから否定する弁護士に依頼しないのは当然のことであって、同氏が「経験がない」などと言うことは、何の根拠にもなりません。

最後に、離婚後の面会交流において、DV・虐待が問題となっているケースがどの程度あるのか、データを確認してみましょう。厚生労働省(2017)によると、母子世帯全体のうち、面会交流をしない理由として「相手に暴力などの問題行動がある」と回答したのは約1.2%に過ぎません。これが、この問題を考える上で一番信頼性が高いデータであると言えます。

これに対し、例えば可児(2020)は「DVに起因し離婚に至る事例は相当数存在する。(中略)家庭裁判所が関与する離婚でDVの割合は2割を超えている」と述べていますが、前述の通り、離婚争いの渦中においては争いを有利に進めるため、事実の如何にかかわらず相手のDVを主張するインセンティブが明らかに存在しますので、こうしたデータには全く客観性がありません。

※本記事は、2021年5月刊行の書籍『共同親権が日本を救う 離婚後単独親権と実子誘拐の闇』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。