「クラゲとか、椎茸とか、皮蛋ピータンは知ってるよな。こっちは素火腿スーフォトエといってハムの一種だな。これは滷牛舌ルーニューソーつまり牛の舌の煮込み、これは鶏の水煮、これはなにか魚の薫製だな」

「じゃ、遠慮なく食うぞ」

遠藤は待ちきれないように自分の小皿にとり分けると、さっそく口に運んで、

「おっ、これはうまい」

と声をあげた。めいめい自分の小皿にとり分けて、ゆっくりと味わいながら食べた。酒は老酒ラオチュー。成瀬の解説によるとめったに手に入らない特級品の銘柄だそうだ。

しばらくして

「中国料理の特徴はなにか知ってるかい」

と成瀬が問いかけた。

「油を使うことか」

と遠藤。

「火の使い方じゃないかな」

と私。

「なんでも材料にすることだろう」

と遠山。にやにやしながら聞いていた成瀬が、

「中国料理の特徴はね、料と理のバランスだよ」

と答えを出した。

「料と理?」

「料は材料の料、つまり素材。理は理屈の理、論理の理、つまり調理法。この二つの文字で料理はできているんだよ。フランス料理は理が勝っているのが特徴だね。ほら、よく言うだろ、靴の底を調理しておいしく食べさせるのがフランス料理の極致だって。それにくらべると、日本料理は新鮮な素材にできるだけ手を加えず、素材の持つうまみを引き出すのが最高の境地とされている。つまり料が勝っているのが特徴だ。新鮮な海の幸や山の幸が豊富に手に入る日本で独自に発達した料理観が根底にあるのさ」

「中国料理はその中間ということだな」

「中間というより、両方の長所を兼ね備えていると言うべきだろうな」

※本記事は、2021年2月刊行の書籍『マドンナの宝石』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。