明里

闇の巫女は、この場所で七百年の年月を過ごしている。共に生活をしていた雪は、この地を離れて今も、陽炎の姫と旅をしているのだろうか? と思うことがある。

魔境神社は、この世界と魔界の境界に建てられた神社。その目的は、魔界のものがこの世界に現れないように魔界との門を守ること。そして、キキョウはその生贄になった。何度となく同じ夢を見る。

伝説の巫女が現れ、キキョウを救ってくれるが、最後の最後という時に、魔境神社の結界に阻まれてしまいキキョウはこの神社の虜になってしまう。終わりのない夢だ。

ある新月の夜、一組の男女が人目を忍び境内に入ってきた。よくある密会だと直感した。別段とがめることではないのでそのまま様子を見ることにした。

「ごめんなさい。許して。これ以上あなたを巻き込みたくないの」

と女が叫ぶ。

「愛している。俺は何も恐れない。死だって恐れはしない」

と男が叫ぶ。

「私は魔性の女なの。私を愛した人は、皆死んでしまう。髪の毛一本残すことも無く消えていくの……」

男は女につかみ掛かると、その場に引き倒した。そして強く強く抱きしめた。女は仕方なく抵抗を止めた。息も絶え絶えになるも女は今一度男に哀願した。

「お願い、あなたを失いたくない」

一度火がついた男の欲望は止まらなかった。今にも衣服は破やぶかれる勢いであった。

「お願い、分かったから。自分で脱ぐから待って……」

女は、覚悟を決めた。せめて床の上でして欲しかった。男は、拝殿の引き戸を引くと拝殿の中に女を連れ込んだ。

「神様がきっと守ってくれる」

と男には変な自信があった。闇の巫女は、ただ様子を見ていた。闇夜でも研ぎ澄まされたその目で二人の行動を隈なく見ていた。

女は冷静だが、男は衝動を抑えられないようである。女はゆっくりと衣服を脱いでいく。男はじれながらすでに全裸になっている。

女が最後の一枚を脱ぎ仰向けに横たわった。闇の巫女には、女の目から涙が一筋流落ちるのを見て取っていた。

「○○、愛している」と途切れそうな声でつぶやきながら、男は女の上に体を重ねていく。

※本記事は、2020年12月刊行の書籍『眷属の姫』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。