手術は楽しい

僕が執刀2例目で完投したことは、外科の医局でも話題になっていた。

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「この前の手術、うまくいったみたいだね」
「すごいよ、その調子だよ」
「よく頑張っているね」

上の先生からお褒めの言葉をたくさんいただいた。

「いえ、畠先生のおかげです」

言葉少なに謙遜したが、そう言われると(僕は案外センスがあるのかもしれない)と思ってしまう。

「山川君、手術うまいみたいじゃん」

東(あずま)さんにも言われた。これに対しては「そんなことないよ」とだけ返した。同期は複雑なので迂闊なことは言えない。

ただ、あくまで腹腔鏡下胆嚢摘出術を完投させてもらっただけのことだ。大きな手術を執刀したわけでもなければ自分の力で完遂したわけでもない。

これで浮かれるようなことはなかった。むしろこの次が大事なのだ。

僕たち専攻医1年生に執刀のチャンスはなかなか回ってこない。特に東国病院の役割が癌などの大手術がメインであるため、そもそも研修中の僕たちが手を出せる手術はそれほど多くない。それはここに来る前から百も承知だったけど、手術が好きで、手術がしたくて外科医になった。