プロローグ

その時代は、受験戦争にもまれて少しでもいい学校に入り、大企業に就職するのが学生たちの目標だった。そして職場、合コン、友人の紹介などで異性と知り合い恋愛をする。恋愛は結婚を前提としたものだったので、必然的に結婚。親たちには子供はまだか、早く孫の顔が見たいなどと会うたびに言われ、女性は仕事を辞めて子供を作り育てることに専念する。

だが秀司と裕子はそういう既定のレールに乗ることにあまり興味は無かった。

秀司は学生の頃から、仕事を持つ独立した女性をパートナーにするライフスタイルに憧れていたこともあり、結婚後も女性が自分の仕事を続けてほしいと思っていた。

毎日の出来事や良かったこと、失敗したことなどを晩ご飯を食べながら話し合えるし、仕事の愚痴や上司の悪口も夫婦ともに仕事をしているなら自然に共感し合える。会社の同僚と帰りがけに安酒場で上司の愚痴を言い合うより、夫婦で話をした方がよほど健康的で家計にも心にも優しいと思うのだった。

第一、夫は妻を所有し支配するわけでもなければ、妻は夫の家政婦でもない。そんな考え方も裕子と気が合ったし、二人はその理想を実現するべく努力してきた。

秀司も裕子もお酒は好きなので、仕事帰りに待ち合わせて居酒屋にも行き、たまには高級な和食やイタリアンなどにも出掛けた。子供が生まれれば保育園に預けて二人とも仕事を続けることも、二人にとってはごく自然なことだったのだ。