ここで私の経歴を少しだけお話ししておきます。私は、大学の教育学部を卒業後、地方の町で教鞭を取ったのを皮切りに、その後、神戸、大阪、ロンドン、福岡、東京と36年にわたって各地の日本人を対象に教えてきました。

キャリアの前半では英語教諭として公立の高校普通科や盲学校の専攻科理療科などで教え、その後はいくつかの大学で研究を続けながら医学や社会学などの学問分野に関する基礎的内容を教えています。

一つのことを突き詰めてやり続けると徐々にその対象がわかってくるとはよく言いますが、私の場合、英語教育という名の下に日本の学校が行ってきた営みについて徐々に明らかになってきたことが最終的にこの本に結実していると考えています。

例えば、これまでの教育では、どうやったら日本人の英語学習が上手くいくのか、または、どうやったら生徒たちは英語で上手く喋れるようになるのかという点にばかり気を取られてきました。

その証拠とも言える事柄の一つに、学校で英語を普通に喋る日本人は大して増えないのに、書店には沢山の英語学習の本や英会話や英語の教え方についてのハウツー本が溢れています。日本じゃ普通、誰も英語喋らないんだからそんなの当たり前じゃない、と思う人もいるかもしれません。

これに対する本書の答えはシンプルなものです。もしもあなたが英語を話したいのであれば、私たちの母語、身近な日本語に頼り過ぎないことでそれができます。

その意味で、これから学校で英語を教えていく若い世代の教師や、そうした若い教師を育てる教育関係者の方々に是非ともお読み頂き、普段あまり考えていなかったかもしれない観点から英語について様々な感想と気づきがあればと期待しています。

例えば、「英語の授業なのになぜ学校では日本語によるコミュニケーションの方が多いのか」という疑問をお持ちの生徒諸君や保護者、「日本の英語教育は英語を日本語で理解するものに決まっているからこれはどうしようもない……」と、なんとなく諦めと共に感じておられる教師や一般の読者には「なるほどそこが問題だったのか!」という驚きと発見を見出してもらえるのではないかと期待しています。

 

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