第一章 世界自然遺産の島「おがさわら」

ザトウクジラは、昭和四十(一九六五)年に捕獲が禁止されていますが、ニタリクジラは昭和六三(一九八八)年三月まで、母島・東港に処理場が設置され操業が行われていました。

小笠原は、イルカウォッチングにも絶好な海域で、毎年、ミナミハンドウイルカとハシナガイルカを観ることが出来ます。ハシナガイルカは、数百頭の群れをつくることもあるようで、ごくたまに見せてくれる「きりもみ回転ジャンプ」などの行動は、観る人を飽きさせません。

ドルフィンスイムでイルカと目が合ったりすると、海中にいることを忘れ、別次元の幻想の世界を一緒に舞っているような気分になります。しかし、相手は動物、適度な距離感を保ちつつ接していくことがマナーです。

こうしたクジラやイルカのウォッチングは、赴任していた頃には、島の産業の一翼を担うまでに成長していました。

2 想像を絶する魚たちの世界

小笠原では当然、ダイビングも盛んです。大・小のショップがあって、小笠原の海を知り尽くしたインストラクターが安全に海の中へとエスコートしてくれます。

平成十五(二〇〇三)年十月、小笠原諸島の最北端の島、聟島列島北之島の「一ノ岩」でダイブした時のお話をしましょう。

水温は二七℃、透明度は四十~五十メートル、最大水深は二五メートルでした。潜水すると、直ぐに群游する体の上半部が色鮮やかな黄色のウメイロが迎えてくれました。さらに深度を増すと、もの凄い数の各種魚が周り全てを覆い尽くすように群れています。

魚の群游状況

こうした世界があるのかと、自然にカメラのシャッターを押し続けていました。その最中にも、イソマグロ、カッポレ、カンパチなどの大型魚が悠然と目の前を通り過ぎていきます。

色々な魚が入れ代わり立ち代わり近寄ってきて、「何しに来たの!」と言わんばかりに目を動かしギョロッと睨みつけては離れていくのです。

岩礁には、ソフト・ハードコーラルが入り乱れてびっしり活着しており、どこに足ヒレや手を突こうか迷うほどです。正に色鮮やかなPR用パンフレットでも見ているようで、どこまでも幻想的な情景が広がっていました。

ソフト・ハードコーラル

船長の説明によると、潮の状況によっては全く魚影を観ることが出来ない時もあるようでこの日は特別に幸運だったようです。それにしても、「生小笠原」の海は、「凄い!」の一語に尽きます。