【前回の記事を読む】いつかは向き合うことになる❝夜間頻尿❞。医師が教える夜間回数を減らす改善策!

まえがき

夜間頻尿はこれらの関係性を加味して考え、抗利尿ホルモンとの関係性を考慮すれば、当初はまさに深淵の中での話のように私には思われました。その深淵とは代謝、発汗と尿量、生体機能の老化、深部体温、睡眠パターン、血漿(けっしょう)浸透圧、抗利尿ホルモンの関係を考察することです。

そこに夜間頻尿の正体が隠されており、その正体に従えば、代謝水準を上げて夜間頻尿を減らすことの重要性を理解できるし、老後の健康の道標 (みちしるべ) となるものが何かがわかると思います。

ここで得た知識をもとに、現実の生活に向けて発信したいことがあります。それは体力を持ち続けるためのルーチンワークなどの自己管理、1日の過ごし方、夜間頻尿の危険信号などについてです。

高齢化に向けていかに夜間頻尿と向き合うかが重要です。夜間頻尿には奥深い意味があり、各方面から見つけた周辺の知見のもとに、クリニックのフィールドワークで得たデータを使い、夜間頻尿の生活指導を考えることが私のライフワークだと思っています。

それが、高齢者の生活改善につながり、当の私の身をもって確かめられるのであれば幸いです。そのような想いで何とか世に残そうと本編を書き綴りました。

もちろん、この生活指導は引き出し豊富で、あらゆる方向から排尿現象を説明できるし日々の生活の変化にさえ補足説明できると考えます。

夜間頻尿の診察は私にとって興味深いものであり、ルーチンワークの一部です。それぞれの患者さんに対する、私の代謝を主眼とする生活指導の説明は当院に特徴的なものです。

最終章[七]では質問に答えるかたちでわかりやすく夜間頻尿について記述したつもりです。それにはちゃんとした根拠があることをこの本編の中で説明していきたいと思います。

また、将来、高齢者になる人も人体の代謝の仕組み、睡眠を理解し、排尿の意味を知れば、パフォーマンスも上がり、充実した人生にすることも可能だと思います。若さの特権に甘えず、己を理解して生活を積み上げて行って欲しいと期待しています。

健康や生活を脅かす夜間頻尿とどう向き合うか

この章の流れ

[一]章では、夜間頻尿の定義と世の中で行われている調査、症状の全体像と年齢的頻度、そのもたらす意味合い、泌尿器科外来で約31年間診療する中で夜間頻尿を通じて感じた患者さんの印象、経過からみた老後の過ごし方の問題提起などを述べています。そして当院(現場)でのリアルな夜間頻尿の実態として、外来患者統計(年齢、季節性)と治療経過、季節性の全体像などを示しました。内服治療に生活指導を加えると、確かに夜間頻尿改善の効果をあげており、生活指導の効果の大半は「代謝を上げ、ぐっすり寝る」ことによるものと考え、代謝で熱エネルギーを上げることの重要性がわかってきました。