第二章 回り道のふしぎ

いろいろな会合に出かけては、

「私は、園長になってからどんどん園児数が減少している園の園長です」

と、自虐的な自己紹介をしていた。

もう閉園しなければならないような状況になったとき、認定こども園に移行することを決意した。園としてはどん底を見ていたので、あとは少しずつでも上を向いていくことができればいい、と自分にいい聞かせていた。

私はまったく認識していなかったが、幼稚園と認定こども園では認可の建築基準が大きく違い、ちょっとした修繕でも、基準に合わせなければならなかった。幼稚園の園舎は老朽化していて、毎年かなり修繕のための出費があり、この際園舎を新築しよう、ということになった。

全国あちらこちらの園を副園長と設計士と一緒に見学して回り、そのうえで設計士がいくつかの図を描いてきてくれた。設計士にシュタイナーのことばを伝えてはいなかったけれども、そのなかにあった丸い形の園舎がいい、と私は選んだ。

いま田舎でも自然はなくなりつつある。田んぼや畑も、区画は人工的に作られたものだ。山の上にも人工物が建ち、川の流れも人工的に作られている。子どもたちに少しでも自然を感じながら過ごしてほしい、との思いで、全体的に丸い園舎を建てることにした。

私はバーチャルな世界は、あまり好きではない。とにかく生(なま)で本物でなければ、感性にはなにも訴えてはこない。広い園舎と園庭でのびのびと、おおらかに成長してほしいと思いながら、毎日子どもたちの姿を眺めている。

園舎は思わぬところで評価していただいた。設計士が応募した二〇二〇年のしまね建築・住宅コンクールで、最優秀賞を受賞したのである。

園舎と同時に、園庭にもこだわった。といっても、園庭作りは、まだまだこれからの作業が待っている。こだわりの一つに、井戸水を汲みあげる手押しポンプがある。私が子どものころは台所近くに井戸があって、時々井戸水を汲んだり、スイカを冷やしたりしていた記憶がある。

そこで園庭に井戸を掘り、子どもたちに思う存分、水遊びや泥遊びをしてほしいと考えた。