第1部 政子狂乱録

三 亀の前の厄難

やれ、嬉しと思ったのもつかの間、

「亀どの、床に這いつくばって、そのままの獣の恰好をしやれ、今度はそなたの後ろの御門を可愛がってあげようではないか、大好きな極太のお道具で妾と一緒に愉快に楽しもう ではないかエ……」

牢内の片隅にある化粧箱には予め、女囚を懲らしめる様々な攻め具が用意されている。政子はその引き出しの奥から、吟味して張形の一種である「互い形」を取り出した。

目の前のそれを目にしてお亀はビックリしてしまった。前の方はともかく、こんな醜悪で大きなお道具を菊門に突っ込まれでもしたらお尻が裂けてしまうではないか。

「そ、そ、そんなご無体な! 御台様、そのようなご立派なお品は私には無理で勿体のうございます……ど、どうしてもといわれるなら……もっと細くて柔らかそうなお道具でお願いします」

その言葉とは裏腹に、女囚は恥ずかしさも忘れて尻を高々と突き出すようにした。

「ホホホ、しおらしや、そなたも満更の素振りのようじゃのう……心配無用じゃ、お道具にはそなたを極楽に導いてくださる尊いお薬をタップリ施してあるから、おまえの菊壺なら悦んで迎えてくれようゾ」

艶書『艶道日夜女宝記』(国際日本文化研究センター所蔵)には張形について、自分で使うもよいけれど、他人にしてもらうのは絶佳で、歳のいった女と若い女との一組で行うのが理想的。

年長者は経験が豊富だから、その行為をしても病やケガの心配はない、と記してある。

更に張形のなかでも「互い形」は初法(単体)のものを二つ合わせたものにして、下一寸は無く、双方五寸五分、真ん中に多くつけ毛束ねてあり、毛先は各々の顔に向かいたり、とあり、それは別名「千鳥」「両首ふたつくび)」などとも呼ばれて、二人の女が双方で遣いあうものである。