ある日、コンコードのラジオ局からの招待を受けた。

「日本人としてお話を聞きたい。」

と言う。

「いつの間にか日本代表にされてしまったのか?」

と思いつつも、ちょっと浮かれた気分でジョンと出かけた。車中、

「どんなことを話すのだろう?」

と少しずつ不安になってきた。

ラジオ局に着いて、放送ブースに案内されると、とても早い口調でトークが始まった。どうやら今日のテーマは、「養子縁組」についての相談らしい。

今までに聞いたことのない最も早いスピードで話す英語に圧倒されながら、唯一と言ってもいいくらいに聞き取れた単語は「アダプション」だった。一人のパーソナリティーの男性から、

「日本では、アダプションはどうなんだ?」

と振られた。

「えーっ?」

と思った。

「いきなり聞かれてもわかりません。」

とは言えない雰囲気だった。

「よくわからないが、日本にもアダプションはあると思う。」

と答える。

「アメリカに比べれば、かなり少ないと思うが、それはアダプションはあまりよいことだと考えていないからではないかと思う。」

と言うと、一瞬そのパーソナリティの人が冷たい視線を向けた。そのすぐあとに、

「でも、私はいいと思います。」

とフォローして言ったが、後の祭りだった。その後、全く話を振られなかったことは言うまでもない。三十分ほどして、放送が終わると、局の人からは、

「よかったよ。」

と言ってもらったが、これこそまさに社交辞令だと悟った。

「アメリカでも社交辞令はあるんだ。」

と思った。帰りにジョンに、

「どうだった?」

と訊いた。ジョンは、

「なかなか難しいね。」

と言った。何が難しかったのかはわからなかったが、車中なんとなく重い雰囲気が家に着くまで続いた。

「もう二度とラジオには出ないぞ」

と心に決めた。 

 

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