第1章 人生の座標軸としての自分軸

1 自分軸の前提

(3)死生観と人生の5大事実 

③人生の5大事実

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  • a) 今
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  • サキ:今を生きる上で「理想的な心の状態」とはどのような状態ですか。

  • コウキ:今を生きる上で「理想的な心の状態」とは図表1-8のように、①デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)という無意識に脳が行う自動思考注1に基づく雑念妄念である後悔・不満や不安などの反芻思考注2ネガティブな感情によって、心が本来持っているエネルギーを不要にすり減らしていることが少なくありません。そこでこの自動思考を停止することによって、平常心を保ち、穏やかで心地よい生命エネルギーの充満した状態で、かつ、②陸上競技でスタートラインに立っている時のように、臨機応変に対処できるように現在していることにのみ明瞭に意識を集中注3している状態です。
  • 写真を拡大 図表1-8 理想的な心の状態

    このように、日々是好日として現在に意識を集中し、今していることに没頭して全力で生き切るという「今生(いまいき)思考」とそれを習慣化した「今生習慣」を身に付けることが大切です。

  • この場合、ポジティブ思考(積極思考)に基づき(常に未来志向的に努力しているので)「すべてのことは良い方向に向かっている」と考え、明るい未来に期待し未来志向的でチャレンジ精神を持ってこの瞬間に完全に集中して生きることです。


  • 注1 「デフォルト・モード・ネットワーク」とは私たちが意識的に何かに集中して活動していない時に働く脳の回路のことであり、この時にはいわゆる自動思考によって頭の中で雑念妄念を漠然と考えています。これが良い面で働くと閃ひらめきなどが生まれ、閃き体験をすることができます。反対に悪い面で働く場合には自意識過剰で不調やうつ病などになることもあります。このように「自動思考」とは頭の中に自動的に流れている思考(雑念妄念)のことです。

  • 注2 「反芻思考」とは過去の後悔や未来の不安などの雑念妄念を何度も繰り返し思い返すことです。これによって人間は多くの場合ネガティブな感情になります。他方、人間以外の動物は過去の後悔や未来の不安を考えず不幸にならずに、目の前の世界だけを真剣に生きています。なお、特にネガティブな反芻思考は心身のバランスを乱し、悪影響を及ぼし、病気などになる可能性があります。このように私たちは日常的に過去・現在・未来の苦痛に悩まされ、不幸せになっています。他方、ポジティブな反芻思考はその人にポジティブで幸せな影響を及ぼします。
  • 注3「集中」とは脳がリラックスしていると同時に非常に活性化され適度な緊張感のある状態で、心を1つのことに集めている状態のことです。そして、このように集中すれば作業を処理し、効率性・生産性が上がり、充実し密度の濃い贅ぜい沢たくな時間が過ごせます。例えば、「集中してやるべきことがあり、恐れや悩んでいる暇はない!」ということです。

    1つのことに集中していない場合には、自動思考によって多くの雑念妄念が生じます。