【前回の記事を読む】最近よく聞く「教科横断的な学習」学校現場で見落とされがちな矛盾とは?

1 変化の激しい時代に向けた教育

1-1 求められる学習の在り方

学校現場の役割は「汎用的な能力の育成」であり、「その特定の時代にしか通用しない力」ばかりを身に付けさせることにならないよう、「社会に要請されていることをそのまま教育課程に下ろすことではない」と認識しておきたいところです。

これからも我々を取り巻く社会では様々な課題の発生が予想されます。それに従い、人々に求められる能力も時代とともに変化していくでしょうから、特定の物事に対応するだけの力ではなく、汎用的な能力が求められるのです。

教育現場の教師にとって大切なのは、社会で何か新しいことが要請されたり、学習指導要領が改訂されたりするたびに右往左往して、その都度提唱される「新しい○○」をそのまま教育現場にもち込むことではなく、自分の中に明確な目的や意義を押さえて日々の教育実践に臨むことだと考えます。

その際には、その基盤となる力が既存の教育課程(カリキュラム)のどこに含まれているのかを押さえておくことも重要です。人生は問題解決の連続です。

「イノベーションは、いま身の回りで起きていることに心を開き注意を払うことから始まるのだから、フューチャリスト(未来志向者)であってはいけない。いまの出来事に集中するナウイスト(現在志向者)になるべき」1)であるといえます2)

「今」を大切にしないと、結局は「後回し」が習慣になり、未来がやって来ないことになります。楽しく、全力で、協働的に、創造性を発揮して……という「今」が、まさに未来にどんどん進入していっている瞬間であり、「今」の態度が、すなわちそのまま未来の姿になるわけです。


1)伊藤穰一『教養としてのテクノロジー AI、仮想通貨、ブロックチェーン』NHK出版、2018. p.138. から引用。なお、「未来志向者」「現在志向者」はそれぞれの訳語として同ページ内に記述されており、引用箇所に筆者が(カッコ)内で追記した。

2)学校でのお勉強は子どもたちの「将来のため」といわれる。このことに関わっては、ほとんどの親が「『子どもたちのいましていることは、将来に向けての準備じゃないと意味がない』と考え、『将来お金がたくさんもらえるように』『将来好きなことができるように』と、『いま』ではなく、『未来』を生きること」を求めているという指摘(前掲書1)、p.137.)がある。
このような発想の教育を受けると、「いまを生きる」方法を忘れてしまい、「大人になっても、将来のための準備が一生続くような意識を持つようになってしまう」(同書、p.139.)という。