小説 『毎度、天国飯店です』 【第6回】 竹村 和貢 サークル勧誘チラシの前で、『徒然草』を抱えた美人と出会った…。 天国飯店の定休日は毎週火曜日。アルバイト生四人で、月曜から土曜の間の五営業日を分担する。四人のうち誰か一人が二営業日に入る。その者以外の三人のうちの一人が日曜日に店に入る。日曜日は大学が休みなので、朝の十時から閉店の午後九時まで十一時間店に入ることになる。「ほな、俺、明日もバイトやさかい、おっちゃんに自分のこと話してみるわ。多分、おっちゃんも構へん言わはる思うねんけど」夏生は、「できない」とは思…
小説 『千恵ねえちゃん』 【第15回】 城 唯士 一緒に暮らし始めてから初めて家族でちゃんとやる誕生会は楽しくて 家に帰り着いたらお祖父ちゃんが来ていて、「暗くなったら服しか見えないぞ」と僕たちがすごく日焼けしたと大げさに驚いた。翌日、僕と由美は午前中ベッドでごろごろして、お祖父ちゃんもお店が夏休みだから家にいた。昭二兄ちゃんと千恵姉ちゃんは二人で友達の所に行くと言って、沖縄のお土産を持って出かけていった。二人だけで出かけるのはすごく珍しい。夕方になって僕と由美、お祖父ちゃんとおばあちゃんの四人で焼き肉屋さ…