【前回の記事を読む】父を亡くした中学生男子「家族を支える大黒柱にならなくては…」

第二章独身時代、青春を謳歌する―日本復興の熱気の中で

社会の荒波に揉まれて

十五歳、社会人としてのスタート

ただ中学生の頃と、働き出してからでは、少しずつ考え方も変わってくる。たとえ地元の店でも社会に出ればいろいろな人と出会う。いろいろな仕事があることも知る。この狭い町で黙々と働くというのも、次第につまらなくなった。

何か自分にはもっとできることがあるのではないかと考え、もっと広い世界を知りたいという気にもなってくる。若さもあるし、これから社会がどんどんと変わっていく、そこから取り残されたくないという気持ちもあったと思う。

私は一年ほどこの店で働いた後に、もっと大きな会社で働きたいと思い、大阪に本社がある近江絹絲紡績株式会社(現・オーミケンシ株式会社)の就職試験を受けて合格し、入社を果たすことになった。採用が決まったときは、とてもうれしかった。

近江絹絲は戦前からある大手の絹紡糸の製品を生産する会社で、上場企業である。一流の企業に就職ができたことで、自分が初めて社会に認められた、そんな気持ちにもなった。