【前回の記事を読む】詩集「村においでなさい」より三編

第三章 満月

いい酒

夫の職場は現場を抱える男組織だった

のん兵衛にはのん兵衛が集まり

男同士 豪快でにぎやかで楽しい酒だ

三次会くらいになると夫は度々

夜中でも仲間や後輩を引き連れ帰ってきた

共働きのわが身

やれやれと思いつつも

簡単な酒膳と布団を用意したら

構わずさっさと寝る

それでも電話で起こされる

「奥さーん 僕はどこに帰ったらいいですかー」

ろれつの回らない迷子の声を聞く

朝はもっと大変! ゲロを吐いてたり

怪しげな水分が床にこぼれてたり

腹は立ててもしようがない

私は夫の仕事仲間が好きで

楽しむ姿が好きだった

ある年それが人事異動とやらで一変した

毎日ストレスを抱え 一人で悩んでいた

だんだん仲間との楽しい酒より

ストレスを忘れるための一人酒になった

とうとう体調を壊し受診した

そして医師から忠告をされた

「楽しい酒は病気を呼ばないが

悪い酒は病気を呼んでしまう」

恨む人はいるけど

それよりもっと

もっと私が努力して「いい酒」に導けばよかった