未来の船

一か月が過ぎたころ、学校から帰った由布子がちょっと得意げにプリントを出してきた。

「由布子の絵が市民ホールに展示されるの。学校で六枚選ばれたんだって。先生が家の人に連れてってもらうと良いって言ってた」「ゴールデンウィークの農家はそれどころじゃないわ」

母親の美智子の言葉に、由布子の肩がスッと下がった。

「何、選ばれたって? そりゃあ見に行かなくちゃあな。よし、こどもの日に行こう」

田植えの作業に東京から戻っていた孝介が声をかけた。由布子は目を輝かし、父さん約束だよと声を弾ませ飛び出していった。

「こどもの日は本家の田植えよ」

「半日、出かけるって言うさ」

「そんな……三日は次郎さんとこの田、四日はうちの田って、決まってるじゃないの」

「機械があるんだから人手は前ほどいらないだろ。うちだって美智子と俺だけでやれないことはないぞ」

「そういうことじゃないわ。それから後の手入れだって、結局兄さんたちがやってくれているのに。うちだけ家族揃って出かけるなんて、何言われるか分からない。いいわ、本家の手伝いは私が一人でやります」

「由布子があんなに喜んでるんだぞ。半日ちょっと出たっていいじゃないか。町じゃあ何をするのも家族が一緒だ。女だからって留守番なんかしない。みんなもっと時間をうまく使ってるぞ」

美智子の表情がさっとこわばった。孝介はしまったと思ったがもう遅い。お前も少し力を抜いたらと言うつもりだったのだが、そうは取らなかったようだ。私は都会の女みたいに気が利きません。取りつく島もない背中を見せて庭に降りてしまった。今回は、一緒に東京へ行くことを言い出す機会を考えていたのだが。チャンスを逃した……

こどもの日はこいのぼりが喜ぶような青空の天気だった。まず、ガソリンスタンドに寄った。

「孝さん、珍しいなあ。娘さんと一緒か」

声をかけてきたのは幼馴染だった。